disc review葉も落ちる晩秋の暖色に歩を進める、脳裏の爽瞬

tomohiro

Black SheepSeptember December

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千葉を中心に活動する4人組エモリバイバル/メロディック、September Decemberの1st。既に各メンバーがそれ以前に様々なバンドでキャリアを積み、90’s emoへの憧れを持って結成されたというだけあって、初作にしてかなり完成度は高い。バンドを組むにあたって、以前からスタジオに入っていたというBa/Vo. 有田とDr. 本庄はEVERYDAY NEW DAREというDEEPSLAUTER周辺を思わせるかなりモッシーでエネルギッシュなハードコアバンドをやっており、このバンドの解散とともに本腰を入れてメンバーを集め、September Decemberとしてスタートしたと語る。

 

90’s emoをと語る彼らだが、実際の彼らの音像はそこからの影響だけでは無く、結論としては90’s emoの後世代でありながら、昨今のエモリバイバルというくくりにしては少し狙っているところが古いようなバンド(例えばEveryone Everywhereなど)にかなり近い音楽を完成させているように思える。(これも確かにエモリバイバルではあるが、最近エモリバイバルというと、キンセラの系譜以降のキラキラ変拍子系アルペジオがその特徴としてまとめられることが多いように思うので、そういう意味でのエモリバイバルとは違うなという所感。)実際に活動開始時期も近いものがあるし、それぞれの90’s emoに対する返答としての00’s emoという見方で見るとどこを取り入れて、どこに自分たちの要素をはめ込んでいくかというところに個性が出て非常に興味深い。USでその手のバンドは、ミドルテンポの曲で90’sより温度感は抑えて、歌メロは気だるくあの頃のバンドを彷彿とさせる、みたいなパターンが多いように思われるが、我が国日本で同じ背景を持って音楽をやっているバンドは、むしろあの頃の性急とした初期衝動感と00’s以降のこなれたメロディック要素と融合させたバンドが多いように思う。いわばELLEGARDEN的だなと。

さて、こんな話をしたところでなんなのだが、#1 “The Future”はUS 00’s系のミドルテンポエモだ。アルペジオリフで長く間を取り、そこからさらにオクターブフレーズでのギターソロに持っていく感じはまさにあの頃の(やや)冗長さの模倣であり、そこに伸びの良いボーカルラインが乗ることで爽快感が加味される。#2 “What You Want”は希望の溢れるアッパーなギターコードにサビのシンガロンが気持ちいい。ライブではテンションが上がること間違いなしの必殺曲。さらに#4 “So And So Only”では歌メロの一発目から突き抜ける疾走感が期待をサビまで煽り続け、サビで爆発するショートチューンで、Shipyardsを思い出す甘酸っぱさだ。#5 “Clown And Crow”はさらにそこから性急さを増し16ビートで一気に駆け抜けるハーコーチューン。「ダダーダダダーダ」のメロコアお決まりのリズムはモッシュピットを沸かす躍動感に溢れる。そしてそこから一気に色味を穏やかに#6 “Seven”へ。”Seven”の名を持つ曲が7曲目に配置されないのはSunny Day Real Estateといい、エモ周辺の不文律なのだろうか。物好きはニヤッとするポイントである。#7にローファイな弾き語り系トラック”Come Autumn”を挟み、アルバムとしての流れも整ったところで、#1的なミドルテンポ多幸感系ディストーションでぶち上げて終わる#8 “Black Sheep”はギターソロがメロディアスで見どころだ。

この後にキラキラエモ系への肉薄を見せる”The wind has died down”を含む2ndを発表して以降、ライブも2014年で止まってしまっている彼らだが、この2枚だけでも非常に聞き応えのあるアルバムだ。本人たちの言葉の通り、今後もマイペースにその活動を続けていってくれたら嬉しい。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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