disc reviewうろんなひつじたちによるがっさくゆめにっき

tomohiro

ゆめにっき1ぱっちりひつじ

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〜アイガ・アピア・アッキーア〜

 

ひつじAが、毎夜夢見る不思議で不気味な夢世界を歌にして歌う、白昼夢型プログレ童謡バンド、ぱっちりひつじの1stアルバム。全7人の構成メンバーによる同人型音楽集団であり、アートワーク、MVなど音楽に限らず表現の全てをメンバーが手がけるDIYアーティストである。

変拍子と複雑な展開を多用し、Dream Theaterからの影響も色濃く感じられるプログレッシヴ・メタルを基調とし、ゲーム音楽特有の無国籍なシンセフレーズも絡めたヘヴィなサウンドに、教育番組で歌われるような、キュートでポップな女ボーカルと、デスボイスまでこなすダンディな男ボーカルが絡む混沌とした音楽は、どこかみんなのうたを彷彿とさせるようななじみの良さがある。耳なじみよくもどこか不穏で気味の悪い感覚は、たまを思い出させる。

 

〜アイガ・アピア・アッキーア〜

 

特筆すべきは、爽やかな曲調とギターソロが非常にポップで、アルバム屈指の歌詞の読後感の良さを誇る#2 “ぶらぶらねこ”、不穏なイントロから突如現れる叙情的なピアノの旋律がスケール感を演出し、Aメロ後のギターのチョーキングの尻上がり感がなかなかにシブく、極め付けは終盤のドラムフレーズがマイクポートノイ(Dream Theaterの元ドラマー)な#4 “むらさきのみず”、アルバム中プログレ感が最も強い#6 “ヘイシロガイとヘイクロガイ”、明らかに合唱曲を意識した曲作り、メロディ選びにもの悲しい歌詞と哀愁あるギターソロが切なくあざとい#9 “エレベーターにのって”。ラストを飾るエンドロール的作品にして一番薄ら寒くて怖い#10 “ひつじ”。

夢日記をそのまま歌詞にするというアイディアならではの、理不尽な展開とオチのなさ、時折よぎる恐怖感が曲を飽きさせないいいエッセンスとなっている。さらには、曲尺の長さやフレーズ選びまで、いたるところにプログレ好きが見え隠れするのに、そこにうたのおねえさんに歌わせても違和感のないグッドメロディを乗せることで無理やり童謡に仕立て上げる、その技量と方法論がなかなかにJPOP的でそのクオリティの高さがオリジナリティを後押ししている。

 

CDはアートワーク担当の空間金魚の出展先、もしくはウェブショップにて購入可能。

唯一無二の童謡プログレ、ぜひ子どもの童謡代わりに。夜泣きも収まるかも知れません。

 

〜アイガ・アピア・アッキーア〜

 

 

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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