disc review脈打つ深みから、緑緑に差す光を呑み込む
朽ちていく中でSeek
大阪孤高のツインベース激情/カオティックバンド、Seekの2nd音源。リリースから既に10年近くが経過していることを微塵も感じさせない、近年のポストブラッククロスオーバー的な美麗、退廃とも並べて語れるようなエモーショナルを長大な楽曲で表現する、国産カオティックの雄とも言える一枚。
#1 “朽ちていく中で”はダークアンビエントやドローンを彷彿とさせるような暗くも神秘的な、ギターの残響によって始まる。そこに力強いタムの音と、ゴリゴリで下品ささえ感じるベースの音が怪しさ、不穏さを加え、冒涜的で神々しい世界観を提示していく。そんな蠢めく混沌を引き裂くように、内なる獣性を解放するような絶叫が鳴り響く時、楽曲は明らかに空気を変える。そしてそんな叫びを引き金とし、疾走する楽曲。14分にも及ぶ長大な物語は一つ目の”変態”を迎えるのだ。グズグズとしたダークな巻き弦の刻みを楔のように打ち込みながら、物語はその高揚感を増していく。賛美歌のようなクリーントーンのボーカルも交えながら、残虐さと荘厳さをないまぜにし、突然の水を打ったような静寂。一度目の静寂は物語の折り返し地点だ。二度目の静寂が訪れた時、この楽曲が既に再生を始めてから11分経とうとしていることに驚きを覚えるはずだ。必然性を持った物語に、時間の長短という要素は入り込む余地がないのだろう。
続く#2 “Tragic Ending”は、いくらか陽光を感じるような柔らかいクリーンギターのフレージングで幕を開ける。ややメタリックな刻みのリフを交えつつ、やはり激情を彷彿とさせるドラマティックなコードで魅せ、感情を発露する。ベースの高音弦の歪んだ鳴りが重心を落としがちな楽曲のアクセントだ。他の曲よりも静と動のメリハリがはっきりした楽曲であり、動に割く叙情性も高い。演奏者のメンタリティの2面性を演奏に込めるような、ハイロウの往復で感情を揺さぶる。
#3 “The Moss Which Grows In Faith”。スラッジーなギターリフと、絶叫による語りにも似た言葉の紡ぎ。次第に言葉に込めた感情に牽引され加速させられていく演奏により、地の底から溢れ出す熱量は、噴火と鎮静を繰り返す。そして最後にすべてを包み込むようにして歌われるクリーントーンでの歌唱は、その後のギターリフのエモーショナルさも合わせてオーケストラライクに脳内に響くだろう。
たった3曲しかないシングルではある。しかしこの3曲で深く、幾重にも重なる世界に浸透していくような感覚を得られる、底の見えないハードコアをSeekは鳴らしている。
現在の最新リリースは2013年の「崇高な手」であり、そちらでは、よりハードコアとしてのスリリングさに比重を置いた楽曲が聴ける。個人的な好みはこちらなので、今回こちらのレビューとした。