disc reviewキュートにはしゃぐポップ・パンク・ライオット
Have You Ever Heard the Lovely Eggs?The Lovely Eggs
イギリスのポップパンク・バンド、The Lovery Eggsの2008年リリースのEP。ギターボーカルの女性、Holly Rossとドラムコーラスの男性、David Blackwellの二人編成で、二人は夫婦である。インディー然としたいい意味で緩い雰囲気で、気軽に聴けてハッピーになれる一枚に仕上がっている。
実質表題曲とも言える#1は、淡々とした進行にHollyの舌足らず気味なボーカルがキュートで脱力感溢れる一曲。淡々と終わるかと思いきや最後の最後ではしゃいだような爆裂が待ち受けており、二人の悪戯っぽい笑顔が浮かんでくるような一曲だ。色んな楽器の音が現れ、おもちゃ箱をひっくり返したような、という表現の似合う楽しげな#2。メロディというよりは二人で歌詞を読み上げているだけ、それも一切噛み合っていないのがまたどこか可笑しく耳に残る。#3は、初期衝動という言葉の似合うパンキッシュなナンバー。ノイジーなギターにドタドタしたドラム、そして叫び散らすように歌うも、相変わらず舌足らずでキュートなボーカル。まるで、ローファイ・パンクに憧れた少年少女が衝動だけで作り上げたかのような、若さゆえの煌めきとか可愛さとか粗さとかそういうのを全て飲み込んだような一曲に成っている。(しかも、少なくともHollyの方は、1994年から音楽活動をしているベテランだというから恐れ入る!)タイトルを繰り返しつづける短めのパンク・ナンバー#4。再生するまではこのタイトルの語呂のキャッチーさには気づくまい。#5はねじまきのようなかちかちとした音と鉄琴の音が印象的な子守唄のような曲。イギリスの子供たちはこんな曲を流しながら眠りにつくのかもしれない。
全編通しても10分とちょっとという短さもまたパンクなのであろう。パンクの持つ楽しさだけを抽出して遊んでいるような二人が待つ小さなガレージで、一緒にはしゃいでみてはいかがだろうか。