disc review躁鬱的衝動を突き動かす感情の炸裂

shijun

音速PABLONIK

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シンガーソングライターとして活動していた岡北有由が、そのバックバンドと結成したPABLONIKの、唯一の音源。Radiohead(バンド名の由来にもなっている)やSmashing Pampkins(歌詞にも登場する)などのUK、USオルタナの影響をもろに感じる楽曲に、岡北有由の感情的でどこかふらついているようにも感じる唯一無二なボーカルが乗る。

曲によって内省的であったり、或いは攻撃的であったりと色は変わる物の、全体的に見て明るい曲は一つもない。全体的に躁鬱的である、とでも表現するのが良いだろうか。アルバムのはじまりを告げる#1がやや明るい雰囲気を持っているかというところであるが、歌詞は「所属しているメジャーレーベルでやりたいことが出来ない」という背景への揶揄も感じる攻撃的な曲だ。(岡北は当時メジャーレーベル所属であったが、このアルバムはインディーズからのリリースである。)#5は教会のようなシンセにノイジーすぎるギターが暴れまわり、ともすれば喚いているかのような歌声で「ここはパラダイスじゃない」と歌うこのアルバム中もっとも狂気を感じる楽曲。#8はコードワークからしてRadioheadの影響を感じさせ、絞り出すような、縋るような、でも決して弱弱しくはないボーカルとともに感情を掻き毟りに掻き毟ってくる。隠しトラックも気が抜けない。アルバム本編とは打って変わってピアノの弾き語りスタイルで英詩の曲だで、美しい鍵盤の旋律の中に今にも泣き出しそうな岡北の歌声が乗る。歌詞はほぼ弱音の様な内容で、最後まで救いのないアルバムに仕上がっている。

CDの帯に書かれた煽り文「朝聞くと、遅刻します。」を見た時には、もっとなんか表現なかったのか、と思ったものだが、確かにこのアルバムは朝聞くと遅刻するような魔力を確かに持っている。何も予定の無い日に家で一人でヘッドホンで聴くのがこのアルバムの楽しみ方なのかもしれない。

 

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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