disc reviewまたもやオーストラリアに現れる、ハイブリッドポストハードコア
StockadesStockades
オーストラリアはメルボルンの5人組ポストハードコア、Stockadesの4曲入りEP。タッピングやアルペジオを用いたクリーンな曲展開と、時として何人もの声が重なり歌い上げられるスクリームの合唱が印象的だ。また、このバンドの面白いところとして、ボーカルが同時にサックスも兼任しているところであり、時として、サックスのムーディな音がジャジーなニュアンスを匂わせる。先日触れたBlind Girlsや、過去に取り上げたClosure In Moscowなど、オーストラリアにはなぜかこういった良質なポストハードコア、スクリーモ周辺のバンドが突然変異的に現れるような気がするのだが、彼らが培ってきた音楽的素養はどこから得られたものなのだろうか。
少々調べてみると、メルボルン市内にもかなりのレコ屋はあるようで、そういったところからいろいろな音楽を見つけてきたのかもしれないし、なんせ今はインターネットがある時代、そういった音楽の土地柄やお国柄はあまり影響しないのかもしれない。(例として、北海道に私用で行った際、少しレコードショップの人や音楽関係の人に聞いた話だが、北海道ではクラブミュージックが盛んだが、その他のジャンルにおいてもうレコ屋は廃れ始めていて、北海道の人たちはネットを使って、道外から通販で音源を手に入れることがメジャーになりつつあるらしい。)
さて、このバンドだが、多展開、変拍子を多用しつつも、Meet Me In St.Louisほどのリスナーを置いていく感じもなく、ほどよく人懐っこさがあり、音像も実にマイルドかつソフトで、ボーカルがスクリームしているのにどこか安心感を与えられるサウンドだ。タッピングといってもTTNGというよりはMinus The Bear的なインフルエンスを強く感じる。最近カナダから少しずつ知名度を上げてきているTTNG直系のGulferなどともよくマッチングするバンドだと思う。エモインフルエンスなのは間違いないが、”エモ”と称するよりはポストハードコアで、実際サックスもamerican footballやJoie De Vivreを始めとするトランペット等のサウンドを用いたエモへのリスペクトよりは、ジャズ、フュージョン方面からのアプローチ、複数ジャンルの統合的なニュアンスが強い気がする。また、全くジャンルとしては別なのだが、アプローチの仕方としては、フュージョンと歌モノ、ロックとのバランス感覚が白眉なThe Reign of Kindoのようなバンドとも並べてみるのも面白いかもしれない。
音源がbandcampから入手可能なのもありがたいことだ。気になった人は是非こちらから、彼らのページへ飛んでみてほしい。
ベーシストがめちゃくちゃ強そう