disc review超硬度のアンサンブルで削り出す、彫像に宿る眼光の鋭角
VACANTVacant
島国日本のセンターポジション名古屋の、アンダーグラウンド=裏栄から満を持して登場する3ピース硬質オルタナティブ、Vacantの1st album。Shellacはもちろん、Shiner、Failureなんかのエモグランジ周辺フィールドにも感じられた硬質で極太、金属感のある弦楽器の鳴りとざらつく変拍子、頬のヒリつく緊張感といった要素を、四方を海に囲まれたここ日本で成し得た貴重なバンドだ。また、それは国内でいうならば、紛れもないCOWPERS、zArAmeの竹林現動へのリスペクト、そして、90年代後半から00年代前半のジャパニーズオルタナ、エモ周辺からのインフルエンスの2016年としての体現であると言えるだろう。
個人的にとても嬉しいのが、ライブでのステージからの気迫(もはや鬼迫と呼べるかもしれない)をそのままパッケージングしたような素晴らしい録音、ミックスであることであり、ここをクリアしたことによって、僕がこの作品において唯一懸念していた、”ライブから入って音源を聴いた時のショボさ”に対する不安は問題なく消え去り、手にとって半日でこうして文章を起こしている今へと繋がったのだ。歪みっぱなしで突き進む、沸点すれすれのハーモニクス撒き散らす暴発ギターと、ゴリゴリとギターの領域を下から削りあげる重低音のベース、そして、それら2本のアルミネックエレクトリクスから吐き出される音、音に次ぐ音を受け止め、これまた骨太なアンサンブルで打ち返す屈強なドラムのリズムワーク。
イントロダクションからすでにキンキンにヒステリックなアルペジオがこれから訪れる暴力を予感させる#1 “Only God Forgives”、5拍子を見事に操り荒々しいリフで聞き手の体力を削り取る#2 “Propaganda”は彼らなりの挨拶代わりと言ったところだろう。続くのは、触れれば切れそうな鋭いベースリフが緊張感を高める、ライブでの定番曲#3 “American Express”、音源の公開もされている、SnapcaseやRefused周辺のモダンヘヴィネスの風格も漂う#4 “Fight Club”や#7 “Death Note”、4分程度とはいえこのアルバム一の長尺、#5 “V Driver”。不穏なアルペジオリフが黒い噴煙を吐き出すかのごとく、視界を覆う#6 “Ultima”、全ての残った感情を出しきる#8 “Bear K”と、全8曲で20分と少しのコンパクトさ。コンパクトとはいえ、そこに込められた熱量は20分という尺を感じさせない充填具合であり、また、ハードながらも曲尺が短いゆえの聴きやすさがあるため、彼らが考えている以上に、このアルバムは多くのリスナーの耳にたどり着くのではないかと思っている。
おそらく彼らを知っているリスナーの多くが、こうして正式に音源がリリースされる日を心待ちにしていたはずだ。必ず期待は裏切らないと、彼らの1リスナーとして、保証したい。stiffslack、FILE-UNDER、diskunion、THROAT、FLAKE、senceless等ここ日本における重鎮レコードショップで取り扱われていることが、何よりの彼らへの期待の大きさの表れだ。以下に取扱店のリストを、公式FBから拝借したものを貼るので、ぜひお近くのレコードショップで手に入れてほしい。
STIFF SLACK http://www.sswatcher.jp
FILE-UNDER http://www.fileunderrecords.com
disk union http://diskunion.net/portal/ct/detail/1007159592
えるえふる (LIKE A FOOL RECORDS) http://listenandfood.red
SENSELESS RECORDS http://www.senselessrecords.com
FLAKE RECORDS http://www.flakerecords.com
THROAT RECORDS http://throatrecords.tumblr.com
TOONICE http://impulse-records.main.jp/toonice/