disc review色とりどりのビーチパラソルと、響くシンガロングに踊れ
Underdog Alma MaterForever The Sickest Kids
テキサスはダラス出身の4人組(当時は6人組)、ポップパンクバンド、Forever The Sickest Kidsの1stアルバム。特徴としてあげられるのが、1stアルバムにして、すでに完成されているキャッチーでどメジャーなポップネスであり、全曲シングルカット並みの熱量も魅力的だ。
何と言っても頭からっぽで踊れる底抜けの明るさが彼らの魅力だろう。夏空の下、彼らの音楽とともに汗を流したスウィートティーン達の数はいかほどか。そんな彼らは、2006年結成。結成したはいいが特に曲を作るでもなく過ごしていた彼ら、メンバーのミスによりインターネット音楽サイト、PureVolumeにうっかり300ドル払ってバンドページをこしらえてしまったことを原動力に、急いで掲載曲を書き上げた。その曲が#2 “Hey Brittany”だ。
一聴して耳に残る楽しいメロディと爽快感のある演奏とボーカル、瞬く間に彼らは注目を浴び、8社ものメジャーレーベルが彼らを取り合った。その取り合いを勝ち抜いたモータウンが彼らとの契約を取り付けた、というわけだ。
なんとも胡散臭いシンデレラストーリーだが、それを力押しで信用させるポップさが彼らにあったことは事実である。
#1 “Whoa Oh! (Me vs. Everyone)”は曲名そのままのサビのWhoa Oh!のシンガロンが爽快だ。裏メロとしてしっかり機能している2本のギターのメロディワークもなかなか聞き応えがある。
Janne Da Arcさながらの爽やかなピアノフレーズが響くのは#3 “My Worst Nightmare”。ラップパートでは本家アメリカのチャラボーイのチェケラッが聞けるぞ。また、#1と合わせてこのアルバムの2枚看板なのが#6 “She’s a Lady”だ。歌詞の軽快な語呂はもちろんのこと、回しイントロのギターリフは一発で覚えられるキャッチーさがあるし、サビでの期待を裏切らないコーラスワークも良い。途中ブレイクで聞こえてくるシンセベースっぽいシンセフレーズ、そこからのCメロのスウィートさ、ハジける大サビ。JPOPを聞き慣れた日本人にもさぞ親しみやすいサウンドだったのだろう。(リリース年のサマーソニックに出演している。)
サビの爽快さと言えば#8 “Phone Call”も捨てがたい名曲だろう。ライブで絶対シンガロンさせてるであろう合唱パートがあるのも、さながらフェス会場にいるような気持ちになれて良い。アップチューンが多い中地味に存在感を放っているのが#11 “Coffee Break”で、ボーカルJonathanの美声がアコースティックギターのアルペジオとストリングスの味付けでより甘さを増す。アルバム最後を飾る#12 “Catastrophe”は、繰り返される「Wake Up You Are Drama Queen」一節がThe Bugglesの名曲”Video Killed The Radio Star”と同じテーマをエモ、ポップパンクの土俵でやっているように思える。
結成からおおよそ2年、勢いに乗りに乗っていた彼らの生み出したマスターピースは、今年もどこからのビーチで若者を踊らせていることだろう。