disc review乳白に包まれる、紅茶色の午睡

tomohiro

the essencial MAMALAID RAGMAMALAID RAG

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2000年初頭に1st miniから”春雨道中”が各FM局でのパワープレイを獲得し、メジャーデビューを果たす、オーセンティックでラグジュアリーなバンドMAMALAID RAGの、バンド形態の集大成となる2枚のアルバムから楽曲をチョイスしたベスト盤。2006年を持って、メンバーの脱退が続いた結果、Vo/Gt. 田中拡邦のソロプロジェクトのような形態となり、現在まで田中一人のバンドとして活動を継続している。ソロでのアルバム制作にあたっては、レコーディングスタイルにこだわりを見せ、マルチプレイヤーとしてほとんどの楽器を演奏しレコーディングしており、中田裕二(ex. 椿屋四重奏)との共通項も感じるような活動スタイルだ。また、ギタリストとしても活躍しており、大橋トリオのツアーサポートにギターとして参加していたこともある。

 

鮮烈なデビューを飾った”春雨道中”リリース当時、田中はまだ20代前半。それを全く感じさせない60-70年代からの色濃い影響を感じさせる完成度の高い楽曲に、現代のはっぴぃえんどとの呼び声も高く、本人も洋楽からの影響とは別に、大瀧詠一からの多大な影響を語っている。

デビュー当時は、ちょうどサニーデイサービスが乗りに乗っていた時期であり、そういった点での比較もされることもあったようだが、フォークロックからの影響色濃いサニーデイに対し、彼らはもっとポップスとして純然たるものを目指していたように感じられる。(実際に田中はのちのインタビューで、比較されることがよくあるが、比較されて初めてその名前を知ったと発言している。)

1st mini春雨道中の発売からものの数ヶ月で発表された1st single目抜き通りは、春雨道中とはまた異なる爽やかでギターサウンドを押し出した楽曲であり、さらにその3ヶ月後にリリースされる夜汽車と合わせて、彼らのバンドとしての活動における大きな地盤を築くに至ったはずである。

 

ここまで三曲、たった一年の間にリリースされたとは思えない、そんじょそこらのバンドならバンド人生をかけて一曲書けるかどうかレベルの楽曲を凄まじいリリースペースで送り出してきたMAMALAID RAGは、その後も、レトロフィーチャーなコーラスワークで前述したような先人からの影響が色濃い#5 “きみの瞳の中に”やまさに「あの頃」を想起させるイントロとサビでのハミングコーラスが鼻を掠める#7 “そばにいたい”、ラウンジ系サウンドを取り入れ、コーヒーやタバコなど、ラウンジカルチャーを象徴する言葉を歌詞によく用い、喫茶系とも称された彼らの、スリリングな午後の一杯のティータイムを思わせる#9 “銀の爪”、バンド形態からソロへの間の楽曲となったナンバー、#11″レイン”までの4年間を集めたベスト盤がこのアルバムである。

今聴いても全くそのまぶしさが色褪せない素晴らしい名曲ぞろいなのだが、彼らは時代に恵まれなかったのではないだろうか。現在のシティポップリバイバルムーブメントにこのバンドがあれば、あるいは90年代初頭に彼らが現れていたら、きっと今とは違った彼らの姿があったはずである。

それほどに埋もれてしまっていたバンドだが、この素晴らしい楽曲ぞろいのベストアルバムをまずは聞いて、彼らの音楽への入り口としてほしい。

 

もちろん一人になってからのMAMALAID RAGもいい。

中田裕二といい、田中拡邦といい、かっこいいし老けないですね。。。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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