disc review泡立つ硝子の採光と、夜半に落つ燐光の金色
Reverie Sound RevueReverie Sound Revue
カナダの5人組フィメールボーカルインディーロックバンド、Reverie Sound Revue。2003年に活動一期のまとめとしての、”Reverie Sound Revue (EP)”をリリース、2004年に一旦活動は休止するも、その後2005年に再開。2009年にアルバム”Reverie Sound Revue”をリリースした。カナダのインディシーンで、なおかつ00年代初頭と言うと、あのバンドを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。そう、Broken Social Sceneである。
99年に活動を開始したこのバンドは、とにかくやたらとメンバーが多いのが一つの特徴であり、なおかつ中心メンバーの多くはそれぞれに違うバンドでの活動歴など、色濃いバックグラウンドを持ったオルタナティブな集団。USインディーへの影響も大きく、昨年もPitchfolk Fesに出演と未だにその影響も強い。さて、今回のReverie Sound Revue、実はBroken Social Sceneのメンバー、Lisa Lobsingerのソロ・プロジェクトのような位置付けのバンドである。
活動初期にリリースしたアルバム、”Reverie Sound Revue (EP)”では、キュートなエレクトロサウンドと小気味の良いポストロック調の演奏に噛み合うLisaの無邪気ながらも色気のあるボーカルワークが印象的な、ポップ・アルバムであった。(ジャケのRainer Mariaというか、あの頃のPolyvinyl感も素敵)
コードワークの少し湿っぽいところは、USよりもややUKに寄った印象を持たせる。この頃の彼女らの音楽は、他にバンドを出すなら、Johnney Foreignerにその空気感を感じ取れるようにも思える。
さて、これから6年の月日を経た彼女らの二作目、”Reverie Sound Revue”が今回レビューするアルバムなのだが(なんか色々とややこしい字面だな)これがまた実に、静かでオーセンティックな、完成された音楽なのだ。
#1 “An Anniversary Away”からじゅわーっと滲み出すような瑞々しさを時折滴らせながらも、ひたひたと降る雨のように、淡々寂寂とその音楽を紡ぐ。バックで流れるハミングの柔らかさがそんな冷たい音楽に人肌の暖色を差す。初期からの、ドラマチックなコードワークを変わらずの武器にして、キラリ、キラリとアルペジオのきらめきを垣間見させる#2 “We Are The Opposite of Thieves”は2分と少しで終わってしまう寂しさが良い余韻を残す。一方、#4 “Pretty One Play”では10年代周辺の下北系みたいなアルペジオがイントロから炸裂し、オッとなるものの、やはりは大人の持ち味で親しみやすさと切なさをうまく調和させる。
総じて雨の似合うシトシトとした落ち着きを見せながら進んでいくこのアルバムでも、#7 “Off Rooftops”の夜を想うような豊かな響きの包容力は別格のものがある。他にもインディーポップに弾み、軽快な#9 “You Don’t Exist If I Don’t See You”や昇降を繰り返すキーボードの柔らかなフレージングと、交互に覗かせるポストハードコア色な危なさのあるフレージングが二面性を持たせる#10 “May Be First May Be Second”、ローファイな演奏の騒がしさが静かな一室と窓の外の喧騒とを隔てるガラスの乳白色を思わせる気だるげな#11 “The Leisure Lost”など、円熟なバンドメンバーによる淡い彩色を思わせつつもその奥に色濃い魅力を秘めた、11の音楽が眩しい。
メンバーの多忙により2010年以降の活動の音沙汰はないが、また気が向いたらふわっといい音楽を届けにきて欲しい、そんな期待感を持って待つことのできるバンドだ。