disc reviewトモヒロツジ選、2020年を彩る10曲

tomohiro

はじめに

年末ですね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。トモヒロツジです。今年はとても世界が動いた年でしたね。僕の仕事は完全に完璧なリモートワークに突入し、3月末までは客先に常駐しながら仕事をしてたのに気がついたら自宅にぶち込まれ早9ヶ月。その間一度の出社も無くひたすら自宅で仕事をする日々でした。出社とかめんどくさいなと思いつつも、昔から家で勉強ができないタイプだった僕は自宅での仕事がはかどるわけもなく、タバコが増える、気持ちが大きく落ち込むなどの様々な弊害を受けました。

そんな生活の中、僕の暮らしの中心にあったBGMは実は音楽ではなくVTuberでした。来る日も来る日もさまざまなVTuberの配信を切り替えながらそれをBGMに仕事をする日々。これまで通勤時間=音楽を聴く時間だった僕から音楽は少し遠いものとなってしまったような感覚でした。そう思いながらiTunesを開いてスマートプレイリストを組んでみると、実は今年リリースのサブスクにある作品だけで777曲耳を通していたらしく、なんやかんや音楽はそばにある暮らしだったんだなと思ったりしています。

今回はそんな中からめちゃくちゃ絞り込んで10曲を選んだので、これを僕のベストトラックス2020として紹介したいと思います。

 

Internal Meetingについて

今年はcllctv.としては大きく二つの動きがありました。一つは年初のライブイベント、Internal Meeting vol.1。cllctv.が活動拠点(というかライターの居住地)を東京に移してのち初めての東京でのライブイベントで、集客面などめちゃくちゃドキドキしながらもなんとか当日を迎え、個人的には大成功で終えられたかなと思っています。

cllctv. 企画 Internal Meeting vol.1 ライブレポート

あの時はまだコロナの影もなく、純粋に人がたくさん集まることのエネルギーの大きさを全身で感じた時間でした。とても幸福な時間だったと思います。

そしてもう一つの大きなイベントが、Internal Meeting Compilationのリリース。3月末、コロナの影が世界を大きく覆った頃、僕と猫を堕ろすの伊藤薫人、そしてcllctv.でカメラマンをしてくれている志賀くんの3人で通話をつないだ中で出たアイデアを勢いのままに実現した企画でした。結果30近いバンドとかなり大きな金額が動く一大プロジェクトとなりました。これも勢いのままに立ち上げて実行したので慌ただしいものだったのですが、とても充実した時間だったと思います。

Internal Meeting Compilation

インターナルミーティングという言葉は、部署内会議とかそういう意味の言葉で、普通に僕が仕事で使っていた言葉だったのですが、コミューンを作っていきたいという意味を込めるのにちょうどいいなと思いこうして、活動の名称として使っています。みんなで今後も密なインターナルミーティング、していきたいですね。

 

3つのインタビューについて

今年は非対面でのインタビューとして、3つのインタビュー記事を書きました。インタビュー記事を書くのは結構エネルギーがいるので数を打てないのですが、しっかりと身の回りの大事なリリースには関わっていきたいという気持ちで書いた3本です。活動再開と新譜のリリースがめちゃくちゃ嬉しかったPRIMACASATA、音楽的大先輩として長く関わらせていただいており、非常に含蓄のあるインタビューに身が引き締まる思いがしたophill、古くからの友達としてその輪郭を描き出せたように思うグッドバイモカ、もしよければ読んでみてください。

 

ベストトラックス2020

というわけで、2020のcllctv.総決算的な意味でいくつか活動の紹介をさせていただきましたので、本題の10選に移りたいと思います。もう以前に比べると全然レビューが書けてなくて、今年も片手で数えるほどしかかけなかったのですが、そんなベストアルバムとは別の視点で、1曲として今年の生活で強く印象に残った音楽を選んでいます。そんな気持ちで読んでもらえたら嬉しいです。

1. Hardest To Love / The Weeknd

僕の聴く音楽にはいわゆる「フジロック枠」みたいなものがあり、フジロックのでかい音響で聴けたら最高だなーと思う曲がその中に入ってくる(実際に出演しているアーティストも多い)んですが、この曲の抜けるような爽やかさとエモーショナルさを持ち合わせたシンセサウンドはまさに苗場で聴きたい一曲で、存在しない架空フジロック選曲としてかなり聴いた1曲です。

 

2. Darkseid / Grimes & 潘PAN

台湾のラッパー、潘PANとGrimesのフィーチャリング曲なんですが、とにかくローがすごい。めちゃくちゃいい音響でゴリゴリの爆音で聴きたい緩んだ低音がめちゃくちゃ気持ちいい1曲で、デカい音響で聴きたい=これもフジロック枠として聴いていた曲ですね。

 

3. The Buddha / Dalai Lama

SNSで身内を中心にやにわに駆け巡った情報がありました。「ダライ・ラマの新譜がめちゃくちゃいい」という謎めいた噂を突き止めた結果がこれ。ニュージーランドのミュージシャン、Junelle Kuninの提案を元に制作された本人公認の1st albumで、ダライ・ラマの説法をベースに澄み渡ったサウンドを展開している。ダライ・ラマ本人の豊かな低音ボーカル(?)と質のいいアンビエントサウンドでかなり印象に残った一曲。仕事などのBGMに最適です。

 

4. Life as a Mannequin / Shiner

90年代後半から00年初頭にかけて、グランジエモという枠組みの中で語れずにはいられない輝きを放っていたShiner。2001年のリリース以降活動は休止状態で、ボーカルのアレンはThe Life And Timesで引き続き名曲を生み出しまくっていたのですが、今年まさかのShinerとしての19年ぶりのリリース!しかもThe Life And TimesではなくShinerとしてしっかり聞かせる新曲群には汗と涙が滲みます。そんな新譜からリードトラックを選出です。

 

5. Kunckleduster / Muzz

続けてグランジ/オルタナな文脈での選出をもう一曲。謎めいた新人としてMatadorからリリースされたいぶし銀のトリオ、Muzzの一曲。セクシーなボーカルラインにドラムとギター、ピアノのみというスリムな構成から繰り出される熟練のエモーショナルが僕の好みにぶっ刺さりした一曲で、アルバム単位でも今年で一番聴いたアルバムかもしれないです。MVもめっちゃかっこいいんだな。

 

6. Swallowing the Rabbit Whole / Code Orange

レビューも書いたので多くは語らないですが、1曲としてのパワーでは間違いなく2020年一位だったCode Orangeの新譜のリードトラックです。ハードコアの新しい歴史を作ったサイバーパンクなメタルコア、とりあえず聴こう!

 

7. Say Less / Nothing

Doomgazeとも称されるサブジャンルを切り開いたハードコアシューゲイズ、Nothingですが、新譜がめちゃくちゃ良かったんです。初期の2枚はあくまでもシューゲイザー要素強めながらもその根底にハードコアが横たわっているバランス感が素晴らしく、よく聴いていたのですが、今作はよりハードコア要素を強め気持ち的には1:1くらいのバランス感でかなり僕好みな作品でした。そんなアルバムの象徴的な一曲がSay Lessです。

 

8. 笑止 / 君島大空

去年のベストにも選出した君島大空なんですが、今年の新譜がまた想像を超えてきて度肝を抜かれました。この曲はdjentよろしくの凶暴なメタルリフと囁くウィスパーが奇跡的なバランス感で融合した彼にしか作れない音楽で、その孤高すぎる独自性にはジャンルを超えた引力があると思っています。世界に輸出すべき日本の音楽1位といっても過言ではないと思わせる最強の一曲です。

 

9. いられないこのままじゃ / ウ山あまね

あまねくんとは昨年猫を堕ろすのツアーで一緒に回って(運転手やらなにやらで)以来のつながりで、今年はバンドの方の神様クラブの新譜もすごく良かったんですが、それ以上にソロ音源が凄まじかった。顔を合わせた時に思わず「日本のArcaになってくれ、日本のFKA Twingsになってくれ」とまくし立ててしまった、アブストラクトな大傑作です。Asiaで見たライブもめちゃくちゃ良かった。

 

10. 煽動海獣ダイパンダ/ 笹木咲

なんかオチみたいに使ってしまったんですが、シンプルに楽曲としてすごく高次元で成立しているし、キャラソンとしての完成度も高かったので選出しました。にじさんじ所属のバーチャルライバー、笹木咲のオリジナルソングとして公開された一曲です。キャラソンとして大事なのって、やっぱりそのキャラクターを歌詞でいかに表現できるかだと思っているのですが、それが非常に秀逸で、ワンフレーズワンフレーズに配信見てる人がニヤリとできるネタがちりばめられている傑作です。上手すぎて作詞畑亜貴かと思った。もちろん、楽曲もとても可愛くてキャッチーなので是非レッテル張らずに聴いてみてください!

 

おわりに

というわけで、気合いで10曲に絞って選出しました!他にも上げたい曲はあったのですが、自分らしい選曲とか色々天秤にかけてこの10曲になりました。もうすぐ年越しの鐘も鳴り始める時間ですが、今年もcllctv.をご贔屓にしてくださった皆さん、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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