disc reviewバカテク美声おばけバンドの怪作

tomohiro

DoppelgangerThe Fall Of Troy

release:

place:

アメリカはワシントンに生まれ、活躍したスリーピースカオティックハードコアバンド、The Fall Of Troyの2ndアルバム。Gt/VoのTomasによるバカテクギターと、突拍子もないシャウトとハイトーンボイスが曲構成をガチャガチャに掻き乱し、リズム隊が再構築するカオティックハードコアの雛形とも言える楽曲構成。特にギターフレーズの、テクニックに裏打ちされた勢いで押し切る力技感は白眉であり、最初にこのアルバムを再生して流れてきた#1のタッピングフレーズにはまさに脳天直撃と呼ぶにふさわしい衝撃だった。ライブ映像を参照する限りかなり荒いプレイだが、これらのフレーズを歌いながら弾くTomasはまさに”只者ではない”。基本的にカオティック、ポストハードコアという分類になるかと思われるが、リードトラックの#3のサビの最高に爽快なメロディとその裏で奏でられる3拍と4拍を組み合わせたアルペジオの絡みはその音選びからスクリーモの血を感じられ、クリーントーンスクリームを好むリスナーに対しても十分な説得力がある。個人的なオススメは#5で、曲の中盤から始まる5拍子の間奏におけるコード進行の気持ち良さ、ドラムフレーズの変化によるノリの変わり方、そこからつながるクサくて無駄に長いソロ(なおこのまま曲は終わる)はアルバム中屈指のスルメポイントだと思うので、ぜひ繰り返し聞いて気持ち良さを感じて欲しい。

このアルバムをリリースした当時、彼らはまだティーンエイジャーであり、なんなら1stリリース当時は17歳。若さ特有の勢いがうまく消化され曲に昇華されているところも”只者ではない”感じを出していていい。また、リリースがスクリーモ、メタルコア周辺の名門Equal Vision Recordだったことも、彼らへの評価の高さが伺える。この後数枚のアルバムをリリースし、彼らは解散するが、10年経ったまでも新しい、まさに名盤といえる音源だ。

 

F.C.P.R.E.M.I.X.

Mouths Like Sidewinder Missles

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

このライターの記事を読む