disc review異国の地、アンニュイな煌めき、歌う少女

shijun

nukonomadköttur

東京を中心に活動する女性エレクトロニカアーティストkötturの1stアルバム。現在はソロで活動しているがこのアルバムの段階では二人組であった。アーティスト名はアイスランド語で「猫」という意味らしい。アイスランド語を引用するところからも感じられるように北欧のエレクトロニカ、アンビエントや、チルアウトなどの影響を感じさせる、どこか儚く神秘的なサウンドが特徴的。歌声もいい意味で日本人離れした、神秘的な程に透き通ったもので音楽性に非常にマッチしており心地よい。

小鳥のさえずりをバックに始まる#1「Allegory」。浮世離れした神秘的な歌声と柔らかに煌めくエレクトロサウンドから想起されるは、まさにジャケットのような、うっすらと光刺す異国の森の中で歌う一人の少女の姿であろう。その音は徐々に神秘性を増して穏やかに進んでいく。続くリードトラック#2「ぬこのま」は前曲の流れを引き継ぐ森を想起させるサウンドに、リードトラックらしく雰囲気を損なわない程度のキャッチーなメロディが搭載されている。神秘的なアトモスフィックを醸し出すコーラスワークや、Aメロの裏で奇妙に揺れる電子音など、広がりを感じさせるサウンドメイキングにも注目したい。#3「Deception」では一転ダークなムードの電子音が聴け、彼女の歌声もどこかダークな儚さを帯びる。横乗りのビートにR&B的なメロディラインも相まってブラックミュージック的なエキゾチックさを醸し出しつつも、どこかポストパンク、ネオサイケ的な暗さもはらんでいるのが特徴的か。#4「Horizon」も引き続き儚いムードで、夜明け前の薄暗い時間を想起させるメランコリックで甘美な展開がトリップ感を増しながら襲い掛かってくる。#6「There is music」はアコースティックギターのアルペジオを中心としたフォークトロニカ的楽曲。ここでの彼女の透き通った歌声は、真昼の微睡みのようなぼんやりとした暖かさを感じさせる。

参照している音楽はまさに北欧をはじめとする海外の物なのであるが、一部の楽曲の歌詞が日本語であることから、参照している音楽に馴染みのない人でも手に取りやすいアルバムになっている。是非一度手に取り、そしてその甘美な煌めきに酔いしれて頂きたいものである。

ところで、このアルバムの4年後、彼女は「覚醒」を果たす。現在はアンビエント、チルアウトなどの方向性、世界観から外れ、「中東サイバー萌え萌えファイター」として日々真の女ファイターを目指して修行中らしい…………とは言え、その方向性の楽曲もまた素晴らしい出来なのでこちらも是非聞いていただきたい。

覚醒後はこちら。

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shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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