disc reviewアイスランドポストパンク界の至宝、繊細で壮大な悲痛の調
River's EndMammút
アイスランドのインディーロックバンド、Mammútのミニアルバム。アイスランドの音楽賞、”Íslensku tónlistarverðlaunin”(Icelandic Music Awards)での受賞経験も多くあるバンドであり、2013年度Pop&Rock部門、”Song of the Year”受賞の「salt」の再録もこのアルバムには含まれている。音楽性的にはポストパンクの影響を受けたダークで退廃的なサウンドを基調としつつ、北欧シンセポップっぽい手触りの曲もあったりとこのアルバム内でも意外と幅広い。そんな中でボーカルKataの透明ながらも影のある歌声が抜群に映える。
怪しげに煌めくシンセと、肉体的でダークなビートが作り上げるダウナーな雰囲気が魅力的な#1「Shore」。悲痛な響きを纏いながらも透明感を失わないボーカルが曲に色を添える。#2「Blood Burst」はシンプルなビートを基調としつつ、その上に重なるメランコリックに揺らめくギターが奇妙な酩酊感を齎す。独特なコード進行に沿って移ろっていくアルペジオがどこか泣ける。エレクトロ的な趣も見せるミニマムなリフの上でボーカルが跳ね回る#3「River’s End」。ぐっとハッピーな雰囲気な楽曲の中で、それに合わせ明るくも艶やかなKataの歌声の存在感。16ビートと轟音シンセで勢いの良いイントロが日本人にも好まれそうな#4「Bakkus」。サビに当たる部分での「Ha ha ha haaaa」が耳に残る。エモーショナルながらもどこか北欧っぽいクールさも持ち合わせているのが堪らない。#5「Salt」はメランコリックなギターフレーズが憂鬱を助長するとびっきり悲痛なスロウナンバー。じっくりじっくり積み重ねた後、一気に厚みを出しさらに悲痛さとエモーションを掻立てる終盤の展開は圧巻。
北欧の音楽に息づいている空気感は、どこか日本人の持つそれと似ていると感じる。憂鬱さとか、センチメンタルな所に対する手触りが似ていると思うのだ。明るめな楽曲の中でのそういった感覚ももちろんだが、時に一見強烈すぎるほどの悲壮感を匂わせる楽曲の中でもまた、その奥に日本人好みな繊細な憂鬱をもまた滲ませており、その二律背反的な憂鬱を持って楽曲に重厚な深みをもたせているのである。是非聞いてみてほしい。