disc review海鳴り待つ朝、窓越しの街の喧騒は倒錯的に

tomohiro

図上のシーサイドタウンfeather shuttles forever

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2019年1月リリース、サックス奏者として知られる東京のhikaru yamadaと、西日本の漁村に住むSSW・マリ(mukuchi)のタッグによる音楽プロジェクト、feather shuttles foreverの2ndアルバム。正直名前を初めて見たときは、further seems foreverがめちゃくちゃ好きなエモバンドか何かと思っていたのだが、実際には軽快ながらどこかじんわりと滲み出る土着性が陰を差す宅録ポップユニット。

#2 “図上のシーサイドタウン”は、アルバム名を冠するリードトラックとも取れるものだが、細やかに気の配られたビートとシンセサイザーの断片をうねるように底鳴りでまとめ上げるベースラインと、周囲への音漏れを恥じるような、ささやく歌声が暮らしに入り込む音楽との調和を感じさせる。#4 “スタンプはNO”は感情表現=スタンプに偏りがちな今時のコミュニケーションを無邪気に皮肉るポップソング。hikaru yamada氏のボーカルが入るところがSPANK HAPPYの菊地成孔パートみたいで、双方の声質の違いが不安定な揺らめきを生み出す。昔、POLTAというバンドのライブを見たときにやっていた、ステマ捨てるって曲を思い出した。#5 “丘”は響くバスドラムや歌謡的で妖しいメロディラインが寒村の祭囃子を思わせる、とても土着感の強い歌。日本昔ばなしを思い出すような、濃厚で自然と近い人の営み。

#7 “ボルシチ”はアルバムで最も明朗なポップソングだろう。少し遠出して隣町の喫茶店に向かうときのような、なんのことのない高揚感をサックスソロも含めて描き出す。#8 “提案 to be continued edit (feat. Tenma Tenma, kyooo, 粟国智彦, 入江陽, SNJO, 西海マリ) “は豪華なフィーチャリングメンバーをまとめ上げたシティポップナンバー。軽快でコンプレッションされたカッティングと野趣の溢れるナツノムジナ粟国氏のギターソロの対比がシティポップとしての輪郭に程よくブレを与える。

 

#2や#8はいうまでもなく推薦すべき名曲だが、僕は#5 “丘”の寓話的に暮らしを描き出す様や、#7 “ボルシチ”の親しみのある日々の描き出しまでを手広く丁寧に行えることがこのバンドの魅力に思える。

 

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tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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