disc reviewcllctv. 企画 bookshelf vol.5 ライブレポート

tomohiro

corner of kanto

ライブも後半に差し掛かる。続いては東京の辺境地から、corner of kanto。すでに耳の早いポストロック愛好家(ここでのポストロックは僕らが普段ジャンル分けとして使っている方)は彼らの存在に気づいていたであろうと思う。しかし、耳の早く、感度の高いリスナー以外にはどこまで知られていただろうか。東京には大変な音楽があるのだ。
息を呑むような細密画が、意志を持ってうごめいているように発散されるメロディが筆を迷わせながらも確実に描くべき景色を塗り上げていく様、それが目の前で繰り広げられていくスペクタクルは圧巻の様相。
シカゴ音響派から生まれたポストロックの原点に、2010年以降のライブラリーでアプローチする彼らの音楽は間違いなくそこにしかないもので、ライブを見るたびに舌を巻く。

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最新の音源である『団地/独立』より”団地”。近郊都市に林立する画一化された建造物とそこに住まう生活のすれ違ったエモーショナルを描き出すこの楽曲は、メロディのセンシティブさにおいて今の彼らの最高峰と言えるだろう。

ライブの折り返し地点となる新曲、”稲穂の海”。
各楽器の緊張感に満ちた絡まりはますます複雑さを増し、一度気を抜いたら解けない糸のほつれのようである。そして、それを違わず解きほぐす彼らの演奏は気迫に満ちたものがあり、その音楽の不思議な揺れに身を任せながらも自然と手に汗握ってしまう。

不穏なチョーキングが張り詰める”暗渠”は僕が一番好きな曲だ。序盤の張り詰めた緊張感が終盤に向けて鼻に抜けていくような爽快さはまさに彼らの真骨頂だと、聴くたびに思うのだ。
彼らの音楽は、遠く霞んだ目的地を目指す旅路の、そこに至るべく超える稜線の数々を描き出すような性質を持っていて、その旅路の遠大さに途方に暮れながらも身を任せてしまう不思議な色をしている。

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その音楽を構成する大きな要素は、ポストロックとプログレッシブロック。後者の要素を強く感じるのが、”浅川”。ヴァイオリン奏法を模したディレイを効果的に使用したイントロ、あくまでもクランチ直前のギターサウンドを維持しながらハーモニーを生み出すギターフレーズは熱狂を生み、聴衆を扇動していく。この日のライブで一番の熱が聴衆から放たれ、大変なことになっていたのはまさにこの曲だろう。中央線の繋がる先、鶴舞と八王子を繋いだ大らかな川の流れは、その厳しさと美しさを確かに名古屋の土地に示した。

 

1. 昼の庭
2. 団地
3. 稲穂の海
4. 暗渠
5. 浅川

cornerofkanto

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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