disc reviewマス『ポップ』へのパスポート
A[]Passport-EPAtrantis Airport
2011年結成、東京を中心に活動中のマスポップバンドの自主制作盤。
現在はこれに収録曲2曲のリミックスを収録した、「A[]Passport-EP+2」がタワーレコードなどで入手可能である。
サウンドの基本は変拍子だったり、キメが多用されていたりと、所謂「マスポップ」というジャンルの音楽である。
基本的にはギターレスで、サウンドの基本となる部分はエレクトロニカの影響も感じるキーボードが担っている。
ベースは時に歪みながらうねり、時にはドラムとともに細かくキメまくる。
出来上がった音像は純粋に心地よく、それだけでもうこのバンドを推す理由になりうるのだが、このバンドの真髄はもう一つある。
それは「歌」だ。
Vo.Sonezakiの歌うメロディラインはどこまでもキャッチーで人懐っこく、マニアックな音楽性とは対照的に大衆に向けた間口を確かに開いている。
歌詞に使われている言葉もこういった音楽にありがちな難解な歌詞ではなく、しかし頭にはすっと入ってくる言葉が選ばれている。
例えば#2の歌い出し、「くるくる曲がる道を抜けたら 遠くに君の街が見えた その道駆けあがっていくさなか よそ見してちょっと躓いて」
くるくるという響きの楽しさもさることながら、平易な言葉、しかし情景やストーリーが浮かぶ言葉が選ばれている。
前述のサウンドの心地よさも相まって、普通のポップスとしても楽しめてしまう。
この、ライトリスナーに訴えかけれるだけの確かなポップセンスから、マスポップというジャンルの間口としての機能は絶大だろう。
事実、彼女たちはRO69JACKを勝ち抜き、あの「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」への出演も果たしている。
マスポップというジャンルに興味はあるが取っつきにくいと思っている人、いや、もはやマスポップに興味が無くても、ガールズポップ好きなら是非聴くべき一枚だ。