disc review脱力系ローファイポップmeetsノスタルジー

shijun

We AreOTOTOI GROUP

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東京で結成された5人組ポップバンド、OTOTOI GROUPの1stアルバム。ここで鳴らされているのはローファイでへなへなした音像の中に、どこか気の抜けた声でどこか気の抜けたメロディと、どこまでも脱力系なポップソング。女性Voがメインだが、曲によっては男女ツインVoになることも。どちらの歌も正直言ってしまえば下手だが、それがまた味を出している。特に多くの曲でメインを取る女性Vo.の声は子供のようで、童謡の様なメロディも相まって、まるで自分が子供のころに聞いたことがあるような、妙なノスタルジーに襲われることだろう。可愛いだけではなく、ほぼ全曲が泣けるメロディを搭載しているところがまた、ノスタルジーを助長してくる。歌詞も泣ける。#5などお祭りのような楽しげなリズムでの歌い出しが「あのときあいつは17歳のままで死んでしまったよ」だから侮れない。後半はややしっとり目で淡々と泣けるメロディーを歌い上げる。また、是非聞いてほしいのが#10だ。この曲は切なさは抑えめでかなり能天気な曲で、歌詞はかなり端的に言えば「たくさんのレコードに囲まれて楽しく生きるぞ」といった感じの曲である。このサイトを見てくれている人の中には、共感できる人も多いんじゃないだろうか。Voにばかり言及してしまったが、このような歌詞を書くバンドだけあって、Vo.以外にも見るべき点は盛りだくさんである。台風をイメージした#6は中盤まるでプログレの様に展開していくし、祭囃子をローファイにしたような#5はピアニカやリコーダーまで飛び出すし、#9のギター2本だけのキラキラした間奏も必聴だ。その他の曲もちょっとひねくれた遊び心で彩られており、脱力的空気の中にも音楽的偏差値の高さを伺わせる。音楽愛に満ち溢れた5人が織りなす切なくて懐かしい世界に、あなたも浸ってみてはいかがだろうか。

 

 

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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