disc review歪んだ地底深くから響く、手招く怨嗟と秘匿

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Colored SandsGorguts

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地を這うようなミドルテンポに延々と繰り返される、地獄のような不協和リフと薄汚いギラギラのベースサウンド、息つく間もなく押し寄せる淀んだグロウル。カナダのテクニカルデスメタルバンド、Gorguts、驚異の12年ぶりの新作となった、5thアルバム。ここ数年で何かと市民権を得つつある、ゴリゴリのゲボゲボな暗黒デスメタルというか、漫画ベルセルクの蝕のシーンが無限に続くようなというか、そういったドス黒いメタルサウンドは日本にも流入してきており、Deathspell Omegaの名前を知る人は国内のメタルフリークにも多いのではないだろうか。ちなみにこの盤はエクストリームミュージックのレビューサイトであり僕が尊敬している、オ○ニストに〜とか、あさってからでも〜等でも紹介されており、そこで引き合いに出されるのは、UlceratePortalのような(キチガイ)エクストリームメタルの皆々様であり、それはもう音像の凄まじさは想像に難くない。

さて、こういったひたすら低音弦をむやみやたらと刻み、人を重低音に陥れることにだけ快楽を感じる変態が集まったような恐ろしい界隈がある中で、エクストリームメタルといっても、また別口で頭おかしい系の界隈もある。

それは、BraindrillOrigin、あるいはKralliceのような、ひたすら意味わからんテクニカルさで聞く人間をドン引きさせる、そんな人たちだろう。

特に、Kralliceに関しては日本が誇るエクストリーム意味わからんバンドこと、Vampilliaが招聘していたのもあり、実際にその身をもって体感した人間も多いのではないだろうか。

さて、こうしていくつかあげたバンドの中でも本当に弾き倒し偏重で聞いててももはや気持ち悪いOriginPortalのようなバンドもいれば、それに比べて幾分メロディアスで旋律性も垣間見え、メタルの枠に必ずしも当てはまらない要素の多いKralliceなど、その表情は様々なわけであるが、Gorgutsに関して言えるのは、そのどちらもの要素が含まれたバンドだということだ。というのも、今回の12年ぶりの曲作りにあたり、中核メンバー以外のメンバーは一新され、そこに放り込まれたのが、KralliceのBa. Colin Marstonであったり、OriginのDr. John Longstrethという、その手の音楽好きならはぁーなるほどと合点のいく錚々たるメンバーであることに大きな理由があるだろう。

もはや近年のエクストリームメタルは、メタル内外を問わず、雑食にもほどがあるクロスオーバーの繰り返しで生まれ出でており、それを20年近いキャリアを持つバンドがやるとなれば、もはや混沌は必然。時に激情じみた凄惨なコードをのぞかせつつ、裏にテクデスの自己主張をやめない気味の悪いベースライン、獣のようなグロウルで野蛮に駆け巡りながらも、怒涛のバスドラ連打と安定感で決して場を崩さない牙城のようなドラムにはひたすら圧倒されるばかりである。しかし、僕がこういったエクストリームメタルの中であえて彼らを紹介しようと思ったのにはやはり理由がある。

なんせ聴きやすいのだ。

聴きやすいといっても、メタルやハードコアという音楽性に触れてきたことのない人間がいきなり馴染むのは不可能だろうが、その辺りで日々しのぎを削り音と戦っている諸兄は、おそらくいざ聞いてみたときのとっつきやすさに驚くのではないだろうか。それこそ、ポストメタルで、Cult of LunaIsisを聞いている人間はそこにも通ずるような重低音の中にひっそりと流れる叙情性に気付くだろうし、カオティックハードコアに普段鳴らしている方々には、彼らのミドルテンポの押し寄せるようなグルーヴ感と多段展開は新鮮に聞こえるだろう。ましてや、MastodonGojiraのようなヘヴィロック、プログレッシブメタルを聞いている層には親しみやすさすらあるのではないだろうか。

こういった複数のジャンルとの血縁を感じさせながらもやはりメタルを土台として突き進んできた彼らの作品は、やはりそれにしかない魅力があり、今日あげたようなバンドに触れたことがある人間であれば、ぜひ通ってほしいものだと思う。ここまで散々引っ張ってしまったが、アルバム冒頭の一曲目をまずは聞いてもらおう。

 

どうだろうか。イントロの一発目からのえげつないコードトーンとギョリギョリ蠢くベースに心惹かれないだろうか。突然訪れる静寂と残響するクリーントーン、静かに啓示のように現れるボーカルは突如全ての楽器と同時に牙を剥く。思わず血沸き肉踊らないだろうか。

 

この曲はどうだろうか。殴り続けるような3曲を経ての4曲目。アルバムタイトルを冠すこの曲は密教的なアルペジオの絡みがどこか秘匿的な怪しさを漂わせつつ、そこから突然邪教の祭壇でも現れたのかというような重音が襲う。前述のバンドを聞いてきたあなたは、きっとこういった薄気味悪い恍惚感を求めていたのではないだろうか。続く#5 “The Battle of Chamdo”ではFleshgod Apocalypseを彷彿とさせるようなシンフォニックシンセで煽り、そしてまたアルバム後半では重低音と混沌の波。こんな無差別暴力みたいなアルバム、たまに聴きたくなりませんか?でもなかなか当たりを見つけるのは難しいものです。(僕はOriginPortalはあまり好みでないので)しかしこのバンドに関してはその隙間にピタッとはまることを僕が保証しましょう。ぜひ聞いてみてくださいね。

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