disc review昭和歌謡テイストで魅せるビッグ・グルーヴ
青空とマントモダーン今夜
東京都内を中心に活動している大所帯バンド、モダーン今夜のセカンドアルバム。現在は7人編成だが、このアルバムをリリースした時には11人編成であり、ボーカルギタードラムベースだけでなく、ツインパーカッションにピアノ、ホーンにヴァイオリンまで要してグルーヴィーで迫力ある演奏が楽しめる。ベースとしている音楽はジャズ、ラテン、サンバなどの音楽であり、それらを昭和ムード歌謡風のテイストでまとめ上げることにより親しみ深いポップミュージックとしてパッケージングしている。力強いVo.永山マキの歌声の圧倒的存在感もポップミュージックとしてのクオリティを高めているか。迫力あふれるサウンドながら、歌詞は切なくエモーションを掻立てるものになっているのも良い。
力強いラララの歌声から始まるラテン調の#1「名犬ジョディー」。ツインパーカッションの絡みが独特の疾走感を産み、エモーショナルな楽曲に仕上がっている。ジャジーな感想のピアノも心地よい。セピア色の色気を振りまくジャズ調の#2「青空とマント」。ボーカルだけでなく、全編を通して楽曲の芯であり続けるベースラインがまた色っぽい。ウォーキングベースの切ないラインをバックに歌われる「間違いなんかじゃない正しすぎただけ」というフレーズもエモーショナル。#3「あのフレーズ」はナイトクラブの情景を映し出したような歌詞も相まって特にムード歌謡っぽさが強い。最初のサビ終わりの控えめなソロといい、間奏のいかにもサックスソロが始まりますよといったフレーズといい、この曲は敢えてベタな要素を取り入れている感じもあるか。#4「海の底」は映画のサウンドトラックの様な趣きもある一曲。ピアノが海底のきらめきを、ドラムが海の深遠さを、バイオリンが海の持つ雄大さを余すことなく表現している。陽のパワーに満ち溢れた楽しげで情熱的な#5「サンポポ」。ピアノを中軸に据えたしっとりしたバラード#6「ららら」。思わず体を揺らしたくなるミドルテンポのトロピカルなジャズナンバー#7「もぐら」はとにかく楽しいホーンセクションが魅力的。オールナイトニッポンジングルや金麦のCMでおなじみのハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラス「Bitter Sweetsamba」からの引用の様なフレーズも現れる。
基とした音楽に対する深い理解をベースにしつつも、ポップにまとめ上げられており、シティポップや渋谷系ポップス、特にTOKYO NO.1 SOUL SETやピチカート・ファイヴあたりのラテン、ジャズにも影響元を持っていたバンド達が志向していた音楽性に、別角度のアプローチからであるが結果的に近しい位置にいる部分もあるのではないだろうか。現在はメンバーの産休もあり、活動規模を縮小しているものの、4人編成やVo.永山マキとGt.イシイタカユキによる二人編成でのライブなど、形を変えつつ精力的に活動しているのでそちらも要チェック。