disc review酩酊を襲う頭痛と支離滅裂な論客
Variations On SwingMeet Me In St. Louis
乱れ飛ぶ脳直空中ブランコなフレーズの数々に、気まぐれに顔色を変え続けるスリリングな楽曲、そこに乗るヘタクソでうろんな酩酊ボーカルでリスナーを置いてけぼりにするイギリスのポストハードコア5人組、Meet Me In St. Louisの唯一のフルレングス音源。活動期間は短く、彼らが残した音源はこれとEP一枚のみだが、近年見られるポストハードコアの流れの中でも飛び抜けて頭のネジが飛んだ彼らは異質な存在感を放っている。
音源のリリースはBig Scary Monstersからであり、レーベルメイトとしては”Tubeload”や”Colour”などのマスポップや”Adebisi Shank”、”Tall Ships”なんかのバトルスの流れを汲むマスロック、”Minus The Bear”、”This Town Needs Guns”(TTNG)などのタッピングエモなど充実の顔ぶれを見せ、彼らの音楽にその煌びやかな色が移っていることは確かなのだが、彼らが属する流れとしては”La Dispute”、”Kidcrash”のような哀愁激情エモや”Crash Of Rhinos”、”Cinemechanica”、”Castevet”のようなハードコアプッシュな男臭いポストハードコアである。
変拍子が自分の8ビートだとでも言わんばかりに両サイドで楽曲を振り回しザクザクと切り刻むツインリード、バキバキでブリブリな一向に落ち着く気配のないベース、実に繊細な仕事を粗暴にやってのけるドラムと楽器陣の自己主張の強さと充実具合が半端なく、まるで思いついたモチーフを次々並べて繋げたような、BPMすら無茶苦茶な楽曲に振り回される感覚は、急下降、急旋回を繰り返すジェットコースターに乗っているかのようだ。彼ら独特の、”ギター一人が同じフレーズを弾き続けながら、他の楽器隊が気ままに口を挟む”スタイルのお家芸を楽曲で次々と披露する。そんなジェットコースターを運転するのが、酔いつぶれた虚ろな目をしたオヤジなのだから、もう、行き先なんて分かったものではない。先の読めないスリルライドをイカれた頭で楽しもう。
変拍子、テクニカル要素を十二分に楽しみたい人には#1,#2,#7、少しアダルトなエモ要素を感じたい人には#5,#8,#9なんかがオススメだ。
All We Need Is A Little Energon, And A Lot Of Luck