disc reviewアジアンテイストなドラマを描く不穏な電子狂想曲
KINGDOMVelvet Peach Seven
福岡県で結成された5人組バンド、Velvet Peach Sevenの2015年リリースの配信限定シングル。地元福岡だけでなく、韓国やタイ、マレーシアなど、日本以外のアジア方面でも活動している模様。歴も長く、過去の情報を見ると元々はアコースティック至高のバンドであったようだが、現在のアプローチはかなりエレクトロ、EDM寄りな印象を受ける。
キッズバイクの公式テーマソングにも選ばれたという表題曲#1「KINGDOM」。切れ味鋭い攻撃的な音像ながら、露骨にキャッチーなフレーズを主軸とし人懐っこい一面もあるのが面白い。ブレイク以降の展開は圧巻。アジアを活動拠点としていることとの関係性は不明であるが、随所にエスニックでエキゾチックなスパイスも利いている。カップリングである#2「SCREW DRIVER」は攻撃的で疾走感の強かった#1と対照的に、ファンキーなグルーヴを主軸とした大人びた一曲。うねりまくりのシンセベースが心地よい。グルーヴの海を穏やかに漂うようにゆったりと歌い上げるツインボーカルも堪らない。堅実に同じような展開を積み重ねていくタイプの楽曲かと思いきや、ブレイク後や後半にはドラマティックな展開も盛り込まれており、こちらを幾度もハッとさせてくれる。
公式HPこそ落ちているものの、FacebookやTwitterを見る限りではまだまだ精力的に活動している様である。彼らの事を知ったのはアイドルとコラボレーションした楽曲『Important feat.夢眠ねむ』(2012年リリース)からであり、現在でも彼らの名前で検索すると出てくるのはImportant関連の記述が多数を占めているのは勿体ないと思えるほどに彼らの色が出つつ最新のシーンも意識した一枚に仕上がっている。ポップかつ日本人、アジア人的感性を持ったEDMを聞きたい方には特におすすめの一枚。