disc review叙情派HCの新星、声高々に凱旋す

tomohiro

Newborn MindNapoleon

2011年結成、UKからの4人組、叙情派ハードコアNapoleonの1stフルレングス。近年流行しているスクリーモ、メタルコアの中間点をDjentやモダンメタルなサウンドで突くTech-Metalなどと呼ばれたりする界隈の中でも中々に存在感のあるサウンドだ。リリースは、以前当サイトでも紹介した、インドからのモダンメタル代表格Skyharborや、ダブステップ要素とDjentの融合を果たし、Djent-Stepを標榜するThe Algorithmなどがレーベルメイトとなるbasik recordsから。2011年の結成から、度重なるメンバーチェンジも災いし、盤石の態勢に至るまで、 フルアルバムのリリースを待ちたかったと語る彼ら。今回の満を持してのリリースとともに、日本にも凱旋を果たす。(ナポレオンなので。)

このバンドの凄いところは、何と言ってもGt. Sam Osbornの抜群なテクニックだろう。まずは一曲聞いてもらうとわかるかと思う。

 

#4 “Brought Here To Suffer”はアルバムでも随一の疾走感と爽快感が魅力の楽曲で、のっけから、というか一曲を通じて休まず弾き続けられる、リードギターの流れるようなフレージングが既に一曲でお腹いっぱいの領域。この時と現在の音源ではボーカルが変わっているが、こちらのよりハードコアよりな悲痛なスクリームも曲に合っているので、あえて古い方を載せておく。(MVの方が見ていて楽しいし。)

このようなキャッチーかつストレートな楽曲だけでなく、様々な魅せ方でギターテクニックを主張してくるのもこのバンドの聴きどころで、#5 “Afterlife”では、エフェクティブなクリーンアルペジオがイントロで、ニュースクールな要素も見せつけながらも、それを皮切りにドバッと詰め込みまくってモタる寸前の早弾きギターが押し寄せてくる。どの曲に関しても言えることだが、スタートメンバーであるGt. SamとDr. Jamesの二人の強固なリズムキープ力が、詰め込みすぎで崩れそうにもなる情報量を力で抑え込めているスタイルで、そこらへんのやりすぎ感が結果として強い個性になっている。

クリーンギターの妙を味わうなら#6 “Maps”。2分弱の中にSamのギターエッセンスが詰め込まれているのでギターキッズは必聴だ。#8 “Stargazer”はイントロにポストロックからの影響が感じられ、彼の音楽的素養の広さを物語る。#9 “Remedy”はツインリードのハモりに牽引されるサビがまさに叙情派!と頷きたくなるクサメロ具合でご飯も進む。

 

全10曲にして36分だが、そんじょそこらのメタルバンドのアルバム3枚分くらいの量の早弾きとグッドフレーズが凝縮された濃縮還元120%な濃密な一枚。アジアで唯一日本に来てくれる彼らのリリースツアーは10/12スタート。もし興味を持った人は逃すことなく!

 

 

どうせ音源がいいだけでしょと思った人向けにライブ映像を。

抜群の安定感だ。惜しむらくはギターがSam一人しかいないところか。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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