disc review虎穴に入るか、モダンメタル発の虎の子
A Head Full of MoonlightGood Tiger
このバンドは、ex- The Safety Fireのギタリスト二人が中心となって結成された新プロジェクトである。
以前レビューしたNapoleonとも近いだろうか。近年シーンを席巻する、メタルコア、ポストハードコア周辺のクロスオーバーの恩恵を一身に浴びている世代のバンドという感じである。歪んだ不協和リフからクリーントーンの繊細な絡みまで息がぴったり合うこの二人のギタリストが、短命に終わったThe Safety Fire解散の後、声をかけたのがex- TesseracTのVo. Elliot Colemanとex- The Facelessの手数ドラマーAlex Rüdingerだったというわけである。このメンツを見れば、Djent界隈のリスナーは自然とワクワクしてくるのではなかろうか。(ちなみに実際にDjentなのかどうかは聞けばわかるはずだ)
ちなみに僕はそういった事前情報は知らずに聞き込んでいたので、改めて聴くと、ドラムの細やかなフィルのパターンの豊富さや、ボーカルの甘く澄んだクリーンボーカルにもより耳が行くようになった。
アルバムのリリースに先駆けて、まずは#2 “Snake Oil”が公開された。
正直な第一印象は、デスボーカルがいまいちだな、、、程度のもので、この時はこれ以上の深堀りをしなかったのだが、リリースに際してのインタビューで彼らが語っているように、この曲はアルバムの中でも屈指の「ヘヴィなナンバー」であり、彼らの真骨頂は他の曲で聴くことができるのだ。実際、アルバムを通して聴いた時、このバンドの印象がかなり変わったと言える。
僕がまずお勧めしたいのは、#1 “Where Are The Birds”。
イントロの気持ちいいリバーブのかかったミュートフレーズと、何よりも僕が好きなのは、ボーカルの入りとともに鳴り出すリズム隊の演奏で、やたら面倒くさそうなハイハットフレーズをニコニコ叩くドラムと、歪みまくったグリッサンドの粘りを生かしたワンパターンのベースフレーズがクランチのミュートと絡んで最高にフィールグッドである。そしてサビでのドカーンと爆発する感覚。ここぞとばかりのディストーションにもただ頷くのみである。リードギター二人のギターフレーズには、独特の味があるのだが、そういった要素を強く感じ取れるのが、#4 “I Paint What I See”や#7 “All Her Own Teeth”だろう。オルタネイトの16分ピッキングを繰り返しながら、美味な音のみをピックアップして、メロディを構成していくのだが、特に#4では、それと合わせるようにして、もう一方のギターがアルペジオを弾くことで、メロディ自体を際立たせつつも、16分オルタネイトがミッドレンジ〜ボトムの存在感を忘れず醸し出す。
更にはポストハードコアバンドのアルバムとしてもはや必須とも言える、クリーンギターでの歌い上げ系しっとりトラックの#6や#8も注目!
ex- Djentyなメンバーを集めてこんな痛快なバンドやったらそりゃ楽しいだろうなとついつい考えてしまう、爽快感溢れる新世代スクリーモ、一聴あれ!
The Safety Fireとか、Good Tigerとかいちいちバンド名もいい感じですよね。