disc review正当ゆえの亜流、80年代リバイバルシティポップ

shijun

AKE NO MYOJYOCittY

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東京のシティポップバンド、CittY3rd mini album。ソフトロックやジャズ、ファンクなどの素養を感じさせる夏っぽい曲、というと今流行りのシティポップど真ん中な匂いがするが、その素養を70~80年代歌謡曲やニューミュージック、アイドルソング方向に注ぎ込んでいるのが特徴だ。ボーカルの歌声も芯があって伸びやかで、それもまたレトロ感を感じさせる。

ウッドベースの音色が心地よく聴き手の心を揺らす#1「東京ガール 上京ボーイ」。シンプルなギターもいい味を出している。ソフトロックmeets昭和アイドル歌謡な#2「波打ち際のチェリー」。サビの途中で急にちょっぴりエモーショナルになるところとか、確信犯的なまでにレトロだけど新鮮。夏っぽいイントロからニューミュージック感全開な#3「ハートビートジャーニー」。優しいサビメロには松任谷由実への憧憬が感じられる。続くはタイトルから松任谷由実な#4「真夏の夜の夢のようなもの」。プロダクションまで松任谷由実(真夏の夜の夢ではない感じだが)風で愛を感じさせる。打って変わってフォーク/カントリー風で切なく始まる#5「売れないバンドマンとつきあってる」。センチメンタルの切り口が最高にレトロだが、歌詞のテーマは今風な感じの視点で切り取られていて面白い。最後はバブル風のディスコポップ#6「私をディスコに連れてって(Dai!Don!Den!Gaeshi!80’sMix)」。バブリーなバリバリとした打ち込み全開でアルバム全体の聴き味とはかなり違った楽曲のようだが、メロディラインはニューミュージック風で、「あぁ~この頃の曲ってこういうのもあるよなあ」という気持ちにさせられ面白い。

#2#4は高野寛プロデュースであり、ある種正当なシティポップである。その正当すぎさが逆に今のムーブメントに乗れていない感じがあるが、この徹底した感じがたまらない層もまた多いはずである。Suchmosにハマれなかったおじさんおばさんにも引っかかりそう。正当ゆえの亜流、是非手にとってみてほしい。

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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