disc review内向と外向の狭間で、ゆらゆら跳ねるハッピーオルタナ
ぼくたち わたしたちBUGY CRAXONE
日本のオルタナティヴロックバンド、BUGY CRAXONEの2017年リリースのフルアルバム。近年の彼女たちは、骨太で乾いたオルタナティヴロックをベースにしつつもハッピーでハートフルなサウンドが中軸となっていた。このアルバムも例にも漏れず、多少の影を奥行きとして滲ませつつも、明るく楽しく寄り添ってくれる一枚となっている。
16ビートで踊れるロックサウンドに無敵感すらある伸びやかな歌声が乗る#1「ぼくたち わたしたち」。サビでの合唱も楽しい。疾走感溢れつつ、メロディラインがノスタルジーを煽ってくる#2「花冷え」。ブルージーなベースラインにラップ風の不思議な歌唱が乗る#3「さーてぃーないん ぶるーす」。ベースのリフレインを中軸に作られている曲だが、ギターやドラムの入れ方にはやはりオルタナティヴなセンスが。センチメンタルなメロディラインで歌われる決意表明がエモーショナルな#4「Balance」。「さよならさんかく/またきてしかく/まぁるくなったら/明日になるよ」なんてフレーズでほっこり切なくさせてくれる#6「シャララ」。シンプルなギターソロがまた心に響く。#7「ベッドの上でさ」はつんのめり気味なボーカルラインがパンキッシュさを出しつつ、キラキラしたギターはやっぱりハートフルな一曲。感想で掻き鳴らされるギターもグッド。#8「ルンルンでいこう」はパワーポップ、シューゲイザー寄りの重厚なロックバラード。エモーショナルな曲調とは裏腹に歌詞は言葉遊びを中軸にしたハッピーなものだが、背負った影のようなものを曲調で感じさせてくる構成が見事。最後はモータウンビートまで持ち出してハッピーな#10「SAY SAY DO DO」で締め。
今年で活動20周年を迎える彼女たち。20周年の節目としてのアルバムということもあり、内にも外にもより強く向かった一枚となっているように感じた。覚悟や決意などを滲ませつつも、一方であまり気負わずに聞けるような軽さもまた含まれる一枚。ぜひ生活のお供に一枚どうだろうか。11月19日、渋谷クアトロで20周年記念ワンマン。