disc review小粋な魚の落とした、飴色の鱗
僕はこの街にすむのさスモゥルフィッシュ
スモゥルフィッシュは北海道は札幌で活動する、フォークロックバンド。当時は全然そんなことも知らず、ブックオフで出会ったのだけど、そう言われてみれば、見つけたのは札幌のブックオフだった気もする。確かYOGULT-poohと一緒に買ったんだった気がする。でも、その時に買っているのは、今回レビューする2ndではなく、1stの方で。それからちょこちょこ1st聞いたりしながら何年か経ったタイミングで、そういえばこれ他の音源聴きたいなと思ったら、ちゃんとあるんですよね、Apple Music。本当抜かりないぜ。邦楽の有名どころには弱いけど、インディーズは洋邦問わずなかなか深いところまでカバーされてると思う。
さて、そんなわけでApple Musicで出会った2ndがいいんですよ。
彼らはフォークを標榜しており、それを思わせる煤ちゃけた、煙さもあるんだけど、MAMALAID RAGみたいなコーヒーの香りを思わせる温かみも持ちつつ、時にYOMOYA方面を匂わせるシティな一面もある。
#2 “檸檬”はこのアルバムの代表曲。弾みのついたリズムに角の取れたまろやかなカッティングがよく馴染む。#3 “本日は晴天なり”は雰囲気を変えて、トレモロのほど良く効いたギターもブルージーなミドルテンポチューン。背伸びしない自然なメロディが飾りなく染み込んでいく心地よさがある。#5 “ダービー”もエフェクティブなギターサウンドが耳触り良い。こちらはワウでジューシーに楽曲を彩りながら、ファジーに鳴らすギターソロが痛快。軽快で乾いたドラムとクラップもいいアクセントだ。#7 “僕はこの街にすむのさ”は表題曲。2種のテンポで緩急をつけながら、なだらかに歩を進め、時に走るくらいの速度で窓の向こうを流れていく街の景色を、切り取り、描き出していく。
さて、打って変わって#8 “フルッティ”。ノイジーで、おもちゃ箱をひっくり返したような騒がしさがあるこの曲は、カーネーションのアルバム、『Edo River』を彷彿とさせる。というか、主に”アイ・アム・サル”を彷彿とさせる。#10 “手をとりあって”はアルバム随一のフォークソング。大陸臭いアコースティックギターとオルガン(アコーディオン?)の鳴り、サビの斉唱はもはや言わずもがなか。そして、ロックンロールチューン、#12 “フューチャー”で足取りも軽くアルバムをまとめる。
しばらくリリースもなく、静かだった彼らだが、去年から3枚連続シングル(しかもYoutubeにシングルからギターソロだけ切り抜いた挑戦的なプロモーションが上がっている。)のリリースをスタート。今尚活動する10年選手である。是非一聴を。