disc reviewmail interview cllctv. meets PRIMACASATA

tomohiro

一発で入って欲しい言葉がスッと聞こえるか、逆に違和感があるくらい詰め込んで歌単体でリズムにしたり


 

Tomohiro 続けて、作曲の具体的な部分について聞いてもいいでしょうか。PRIMACASATAの音楽には、歌詞やメロディのメッセージ性の強さも、構築的な楽曲・演奏の緻密さもあり。これらが歌詞から生まれるのか、曲から生まれるのかが気になります。

 

村上 歌詞にならないような散文が先に出てきて、そのイメージに沿った曲を作ります。ラフをメンバーに送るんですが、その際メロディは個人的に仮で考えるけど、録らずにこのパートはこういう感じでっていう注文だけして一回だっつんに丸投げします。

 

Tomohiro 言葉が先立つのですね。それが楽曲全体の世界観を牽引していくことになる、という。メロディってやっぱり曲を作っていく上で頭の中で鳴るようにして、浮かんでくるものだとは思うんです。それでもそのメロディをそのまま曲に乗せるのではなく、だっつんさんに作ってもらうというのは、一つの信頼の形にも思います。

 

村上 メロディに関しては、だっつんと僕で好きなボーカルが真逆な事が組んでから発覚して、音符の数や譜割りの癖なんかは、歌う本人が持ってるセンスで歌ってもらった方が良いのが出来るので任せてます。

その後自分の持ってる曲のイメージと大きくかけ離れそうだったり、音が多い場所から音を減らしたり、逆に足したり細かい音階を修正します。

こうして振り返ると、彼からしたら相当キツいと思うけどよくやってくれるなぁ 笑

 

Tomohiro DTMの緻密さですね 笑

人によって歌い方や声にも癖がありますし、それがそのままメロディの個性に現れますよね。だっつんさんの歌う歌は、その歌唱力ももちろんですが、メロディの運び方に彼にしか選べないキャッチーさが潜んでいるように思いますし、それが楽曲の描いた景色に、より鮮明な色を与えているように感じます。そしてそれにまあささんが繊細さを加えていくことで、曲が完成に近づいていくんですね。

歌詞についてはこの時点ではまだ作りこまれていないんですか?

 

村上 ちゃんと歌詞を落とし込むのは一番最後で、最初に出てきた言葉だけだと、大体メロに対して言葉が足りないので、具体的にしていく感じです。

一発で入って欲しい言葉がスッと聞こえるか、逆に違和感があるくらい詰め込んで歌単体でリズムにしたり、あとは僕が歌詞を作ってだっつんが歌うので、メロディの歌いやすさと言葉の良さがトレードオフになる事が多くて気をつけながらちょっとづつ確認して作ってます。

 

20200118-118

 

Tomohiro 歌詞まで非常に緻密な作り込みが行われているんですね。多くの場合、歌詞が先だってメロディが生まれる、もしくはメロディに乗る歌詞を考えるパターンのどちらかになるように思いますが、PRIMACASATAではその複合で曲が作られている、と。

なんだか、複数人が参加するものづくりプロジェクトのような進め方です。まあささんは完全にPM(プロジェクトマネージャー)ですね 笑

捉え方次第では機械的なこの作曲法から、あれほどにエモーショナルな楽曲が生まれるのは驚きです。

 

Tomohiro PRIMACASATAの音楽は、結成当時からもっていた「伝える力」をより強める形に、ハードコアからより歌に近いものに時間をかけて変わって行ったように思います。これにはどういった思いがあったのでしょうか。

 

村上 伝えたい、発信したいって気持ちは元々強く持っていて、当時はそれを表現するためのメンバー間の共通認識がポストロックやハードコアだったのかなと思います。

伝えたいという熱量は変わらないけど、メンバーの生活環境が変わって作品を出す機会も少なくなり、1つの曲で満足いく表現をするのに歌が直接的でいいと思いました。

 

Tomohiro なるほど。生活環境が変わっても、伝えたいことは変わらずあるわけで、それをペースが変わっても伝え続けるために、より”伝わる”音楽へとシフトしていったんですね。先ほど、作曲について話を伺いましたが、このような環境の変化で、作曲の方法は何か変わりましたか?

 

村上 ギターフレーズに関してはギターの快くんがDAWを使えるので、スタジオに入らなくてもデータでやりとり出来る様になって、お互いのフレーズを聞いた後でアレンジを繰り返せるのでしっかり考えられるようになりました。

それ以外はあまり変わらないですね。

 

Tomohiro バンドとして集まれる機会も限られてくると、DAWが使えるだけでかなりフレキシブルになりますね。とはいえ、それ以外の部分においてはすでにバンドとして出来上がっているスタイルがあった、ということなのだと思います。

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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