disc reviewノイズに彩られた非日常への抜け道
1+1=26the vanities
栃木出身の二人組インディーロック・ユニットthe vanitiesが、ネットレーベル「Ano(t)racks」からリリースしたEP。リリース、と言っても無料配信なので、この記事を見て少しでも気になった方はダウンロードしてみることを強くお勧めする。(記事の最後にAno(t)raks公式の配信ページへのリンクを貼っておく。)シューゲイザー、ニューウェーヴ、ポストパンク等の影響を感じるインディーロックを展開している。時に甘美に、時に真っ白に、時にざらざらと展開されるノイズと、無機質に曲に対して凛と立ち向かう打ち込みドラムがとにかく印象的である。ローファイな音像と無機質なドラム、あとはボーカルの声質の影響だろうか、どこか北欧っぽい低温感もある。
たった4曲のEPであるが、彼らの魅力は存分に詰まっている。揺らぎきらめくギターが脳を細かく揺らし、無機質な打ち込みのドラムがむしろ非日常感へとのトリップを促す、インディー・ポップ的楽曲#1。中盤で見せる静寂からの轟音も癖に成る。続く#2はマイブラ直系のうねりのある泣きリフが印象的なシューゲイザー。アルバム中もっともポップさを見せるメロディもどこか儚げで、歌い方も相まってどこまでもセンチメンタルを煽られる。#3ではここまでどちらかというと無機質気味であったVo.Marinaも怪しげな色気を振りまき、ギターもノイジーなだけではなく珍しく硬質なサウンドも見せ、曲調もポストパンク的に暴れ出す。ここでも無機質だが力強い打ち込みドラムが光り、間奏の高圧噴射される霧の様なノイズの中でひたすらに刻まれるビートは圧巻である。締めを飾る#4は#1の逆再生のBPMを落とし再構築した実験的なインスト曲。逆再生を体感したことのある人なら理解できるのではないかと思うが、リリースから始まりアタックに帰着する時の、どこか別の世界へと吸い込まれるような感覚がほぼ常に引き起こされており、この世のものでは無い景色に連れていかれるような楽曲になっている。余談だが、アルバムをループ再生してみるのも面白い。裏返った世界が再び元に戻っていく様を味わうのは、なかなか奇妙な感覚である。
なお、現在彼らは(公式にはアナウンスされていないようであるが)活動休止中の様である。Vo.marinaの方は今も音楽活動を続けているようなので、気に成る人はチェックしてみるのもいかがだろうか。
アルバム公式ページ(Bandcamp)(Free Downloadへのリンク有)