disc review生活と他者、自分と社会に対する一考察と事実

shijun

失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかいアナログフィッシュ

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アナログフィッシュの2011年リリースのミニアルバム。もともとSPARTA LOCALSやフジファブリック、キャプテンストライダムあたりにも近い和のテイストやニューウェーブっぽい不穏さを軸にした中毒性のある邦楽ロックをプレイしていた彼らだが、このアルバムごろから徐々に生活感とプロテスタント性を持ち合わせた都会的でスタイリッシュな音楽をプレイするようになってくる。

アルバムタイトルにもなっている「失う用意はある?それとも放って置く勇気はあるのかい?」というフレーズのリフレインが印象的な#1PHASE」。人力ドラムンベースとでも例えれそうな細かく高揚感のあるビートに乗る、ゆったりとした都会的なメロディが心地よい一曲。アコースティックギターとベース、パーカッションがゆるやかに絡み合うフォーキーな#2「戦争がおきた」。「戦争」というテーマから一見説教臭そうな印象も受ける楽曲だが、実はそうではなく、この歌における主人公の心情・主張を描いてるのが「何かが変わるといいね」という一文だけなのが上手い。バンド初期の楽曲をテクノポップ風にリメイクした#3TEXAS」。このアルバムの空気感にもぴったりとマッチしている。乾いた明るさを纏い、ダンサブルな#4UNKNOWN」。この曲は割と以前のアナログフィッシュのイメージに近いか。

ここまでの4曲を作ったのがGt.Vo.の下岡であり、ボーカルも彼がつとめて居るが、アナログフィッシュは二人のソングライターと二人のボーカルを擁して居るユニットであり、最後の曲#5「風の中さ」はBa.Vo.佐々木によるものである。淡々とした空気感の中でチクリと刺してくる下岡楽曲に比べると佐々木の楽曲は幾分情念的。歌い出しからエモーショナルさを感じさせる切ないメロディーが聞け、でも優しさに包まれた楽曲である。この二人の特徴が絶妙なバランスで交じり合うのが彼らの魅力だと思う。1999年結成ながら今なお新たなファンを増やし続けて居る彼ら。きっとあなたの心に響くものもあるのではないだろうか。是非聞いてみてほしい。

 

WRITER

shijun

ポップな曲と泣ける曲は正義です。female vocalが特に好きです。たまに音楽系のNAVERまとめを作ってます。なんでも食べます。

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