disc review層雲を抜ける一矢突き抜け、青い尾を引く

tomohiro

AstronoidAstronoid

USマサチューセッツ出身、メロディック・シューゲイジング・メタルを確立した4人組Astronoidの2ndアルバムとなるセルフタイトルアルバム。彼らに関しては、耳の早いメタルリスナーに関しては、すでに2016年リリースの1st、『Air』の時点でその煌びやかで新世代的なサウンドに耳を奪われていたのではないだろうか。Marunouchi Musik Magazine、オ◯ニストによる音楽批評等々、これらの音楽を愛聴するリスナーにとってはもはやよく聞く名前であろうこれらのメディアも、リリース当時一斉に  『Air』を紹介した。

僕は寡聞にして知らず、Astronoidに出会ったのはごく最近だが、これらの愛好家の例に漏れず、シューゲイザーとメロスピ、スラッシュメタル周辺との融合を非常に高次元で成し得、Dream Thrashを標榜する彼らの名刺がわりのこのアルバムはとてもたくさん聞いた。

 

 

そして、今回はセルフタイトルアルバムとなる2ndのレビューである。

初期のAstronoidにはグロウルが取り入れられていたり、ジャケットにも暗色が多く、そこから表現されるように今よりもややダークな色合いを持った楽曲が多かったように思う。それがある種、躁に突き抜けたのが前作『Air』。そして今作はその延長線上にある作品に思える。『Air』全体に漂う空に突き抜けるような爽快感は、いわばボーイングの離陸時のような、高揚感と安心感を持った上昇で語ることができる。それと比較すると今作は上空で航行が安定したのちの心地よい緊張感と安定感の維持、同居だろう。楽曲全体に細やかに散りばめられたバッキングギターのひそやかな仕事ぶりや、厚さを増した音の壁、渋くテクニカルで旨味のあるギターソロ。それらに合わせて以前よりものびのびとメロディを作り上げていく姿にはすでに貫禄も見え隠れする。

個人的なおすすめは、まずは1曲目にふさわしく、彼ららしい視界の広がりを描き出し、ギターソロも心地よい#1 “A New Color”、変拍子とギターリフメインで組み立てていく#5 “Breathe”やハードな巻き弦のブリッジミュートがザクザク突き進むイントロが心地よい#6 “Water”、哀愁を奏でるツインリードのハモリが轟音を牽引する#9 “Ideal World”。彼らの音楽の入り口としては僕は1stがオススメだが、それを踏まえた上で2ndを聞いた時の心地よさは、Deafheavenが『New Bermuda』で完成させた世界観を拡張させた最新作、『Ordinary Corrupt Human Love』を聞いた時のような安心感に似た感覚をあたえてくれるだろう。

(フジロックでないかな)

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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