disc review渇いた激情とパンクライクシンギングの微妙な中和点

tomohiro

Wasser Kommt Wasser GehtCaptain Planet

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ドイツはハンブルクのポストハードコア/パンクバンド、Captain Planetの1st。いわゆるポストハードコアや、激情、エモ界隈ではあまりその名前を聞かないように思うドイツ(でもつい最近INFORESTと国内を回ったThe Tidal Sleepはドイツですね。)だが、そんなドイツでもシブい存在感を放っているのが、このCaptain Planet。演奏自体はかなり爽快感があって、メロディックパンクに位置づけされていたりするのもなんとなく感じ取れる。この辺りはルーツが欧州激情、US激情あたりにある、もしくはそのあたりと同じルーツを持っているバンドのようにも感じる。結成は2003年と、なかなか古株のバンドで、今年も一枚アルバムをリリースしている。

 

これは今年リリースの新譜から。これだけ聞くならばなるほどメロディックパンクと形容したくなるのもなんとなくわかる。

 

メロディックパンクと形容されたりしながらも、僕がなんとなく彼らを激情っぽいなって思ってしまうのは、まずは何をおいてもボーカルの叫んでるのか歌ってるのか分からない下手くそなメロディワークと、やたら耳につく独特の声質。そして、全体としてクランチ寄りでパリパリ、ブライトな音像で奏でられるややエモめクサめのフレージング。この辺りにはやっぱりあの界隈独特の垢抜けなさを感じてしまって、不思議と親近感のようなものまで感じてしまうのだ。

 

#1 “Wespenstich”は冒頭の歪んだベースの推し進めるルートにふらっとボーカルが乗ったときの脳内の違和感さえも、エモい進行とアルペジオで押し切るパワー感のある一曲。#3 “So Match Water So Close To Home”はAメロで繰り返されるコードの投げかけが絶妙に欧州っぽいドライな激情要素があって趣深い。サビ後の単音フレーズのキメもかっこいい。#5 “Sammeln Und Stapeln”はアルバム屈指のエモーショナルナンバーで、ぐいぐい上昇する進行のサビらしい部分では珍しくメロディアスな歌が聞こえてくる。#6 “Hundertzwanzig Sachen”はイントロのジャッジャッジャッジャッテレレテレレテレ(としか言えないし聞いたらわかると思う)が妙に頭に残るポストハードコアっぽさのある一曲。#9 “Abenteuer Im Metadelta”はイントロのオクターブ奏法でのフレーズがメロディックパンクな疾走感をはらみつつもいい感じに進行がスッキリしないのがいい。

全11曲で平均3分程度のまとまりの良い楽曲が続くアルバムで、フレージングにエモ〜激情〜メロディックと雑食な旨みが詰まっているので、一度聴き始めると結構ズルズル聴けてしまう独特な切れ味のアルバム。

 

ジャッジャッジャッジャッテレレテレレテレ

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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