disc reviewinterview corner of kanto meets cllctv.
“ドラムの波形を出すじゃないですか。それを見ながら、自分のキメと波形のピークがピッタリ合ってないとだめだって決めて。 -成塚”
Tomohiro:今作『昼の庭』のアルバム制作にあたってのお話を聞かせていただきたいです。
矢部:これについてはなんですけど、まず今回の作品ってレコーディングからミックス、マスタリングまで全部ベースがやっているんですよ。彼はすごく器用でエフェクターとかも作れちゃうから、リードギターの足元とか全部彼の自作エフェクターで。几帳面なんですよ。
成塚:僕、もともと大学入ったころぐらいからDTMをやってて。それである程度の機材はそろってたんですけど。corner of kantoに加入するにあたって、これじゃだめだなと思っていろいろ買いそろえたんですよね。実際今回もそういう機材を使って、ミックスも散々やり直して。
Tomohiro:ミックス…。地獄の時間ですよね。僕は歌が下手だったから、「ここ半音ずれてるから上げとくね。」「す、すいません…!」みたいなことがよくあって。
矢部:笑。僕らに関しては、成塚が性格故というか、一切のミスを許してくれなくて。録り直しに録り直しを重ねて、歌もギターも何十回もテイクを重ねて。
成塚:本当、今思うとあの時期はおかしかったなって思うんですけど 笑。ドラムを録った後、僕がベースを入れるんですけど、ドラムの波形を出すじゃないですか。それを見ながら、自分のキメと波形のピークがピッタリ合ってないとだめだって決めて。本当100回くらいは録り直したと思うんですけど。
Tomohiro:めちゃくちゃだ。
矢部:脅迫的だったと思うんですよ、あの時期は。あとに恥として残るって言いながら。1st albumだからって。
でも実際それですごい演奏の基礎体力がついて。あれ以降すごくライブうまくなったよね?
成塚:そうだね、それは本当に 笑。
その脅迫的だった時期の反動というか。スマホで音ゲー(バンドリ)をやってたんですけど、それまで。このレコーディング以降、あのノーツが流れてくるときとタッチするときのラグが微妙にあるじゃないですか。それがすごく気持ち悪く感じ始めて。あと、歌メロにノーツが沿ってるから、8ビートなのになんでこれを叩かなきゃいけないんだみたいな気持ちがすごい出てきて。やめちゃいました。
矢部:なにその話 笑。知らなかったんだけど。
Tomohiro:もはや職業病ですね 笑。
Tomohiro:成塚さんが加入して一年ぐらいですよね?加入時にはもうアルバムの曲は全部できてたんですか?
成塚:その時点だと…。3曲ぐらいができてたはずです。”暗渠”、”昼の庭”、”浅川”だったと思います。
矢部:そう。まだその頃はプログレしてたというか。僕がいろいろ詰め込もうっていう意識で作ってた曲たちで。でも、その中でも”暗渠”は少し違って、初めてみんなに作曲の解釈を任せた曲で。それが結構うまく行って、それ以降作曲のスタイルが変わったんですよね。成塚が加入した後も同じようにしてみんなで作っていくスタイルで”私たちの伴奏曲”ができて。こうしてアルバムの曲が揃っていった感じですね
あと、”不明の季節”なんですけど、これは完全に趣味というか。ライブではやらない曲なんですよね。「一つのフレーズを繰り返して鳴らす」っていうコンセプトを入れて作った曲なんですけど。出来上がったら思ったよりつまらないなって 笑。
みんなライブで感情を隠せないし、飽きっぽいから。これライブで演奏しちゃうとみんなつまらない表情になっちゃからやらないでおこうって。
Tomohiro:それは素直というか、なんというか 笑。
実際、レコーディングの期間ってどれくらいだったんですか?
成塚:レコーディング自体は2回に分かれてるんですよ。まずは僕が入ったときにできていた3曲を録って。でもそれじゃアルバムにならないからって曲作りして追加で録って。それが”私たちの伴奏曲”と”不明の季節ですね”。実はもう一曲入れようかって話があったんですけど。
矢部:散々こねくり回した挙句、これはアルバムに入れたら恥だと思ってボツにしました 笑。
その話とは別なんですけど。実は今後シングルを出す予定で。”団地”って曲なんですけど。
Tomohiro:あ、過去の音源に入っている曲ですね。
矢部:そうですそうです。この曲は実は自分の中で転機になった曲というか。僕の住んでいる八王子の団地の感じとかをうまく落とし込めたような気がしていて。アルバムにも入れようか迷ったんですけど、まだできていなかったというか、毛色が違うというか。そういう理由で別に分けることにしました。
成塚:実際のレコーディングからマスタリングまでの期間としては合計、だいたい4か月ですべて終えられたという感じですね。
矢部:僕ら、曲をすごく練る分、レコーディングではもう全部決まっているから早かったというか。
あと、これは実際に活動をしていくにあたってなんですけど。音源のジャケットとか、MVとか、全部同じカメラマンがやってくれてて。
Tomohiro:あー、なるほど。MVもジャケットも楽曲をよくあらわしていて、共通の温度感を感じるなとは思っていたんですが、そういうことだったんですね。
矢部:はい。僕ら、ただでさえ分かりにくい音楽をやっているから、少しでも入りやすくしないとって。だから音源もすごいこだわったし。パッケージ面でも伝わりやすいようにって、親交があって僕らを知ってくれてる人に頼んで。
あとは、色々な理由があるんですけど、音源を自分たちだけで完成させなきゃいけなかったんですよ。オトナの力を借りられないというか。だからある意味で真のインディペンデントだなって思ってます 笑。やり切ったという自負はありますよね。
成塚:本当に僕自身も凝り性だったから。レコーディング用のマイクも気づけば10本くらいに増えてたし、プラグインとかもたくさん買って。でもその結果すごくいいものができたと思っているので、よかったなと思います。
矢部:本当、鬼気迫るものがあったよね。あの時期は。
本当、MVの撮影とかも色々としんどい話があったんですけど、ここでは話せないこともたくさんあって 笑。
たくさんしんどいこともあったけど、本当に自信のあるものができたのでよかったなと思ってます。
Tomohiro:音源を聴いた時も、corner of kantoっていう強いカラーを感じましたし。音源のクオリティやジャケットとか外身の部分にまでよく気を配っているなと。正直な話、そういった部分はいわゆるオトナの手を借りた部分だと思ってたんですよ。それぐらいよくできていたから。だからこれがすべて自分たちの力のみでできているのには本当に驚きました。素晴らしい作品だと思います。
今日は長い間お話しいただいてありがとうございました!最後になりますが、メンバーの皆さんの人生のベストアルバムを伺って結びとしましょう!
矢部、成塚:ありがとうございました!