disc reviewcllctv. 企画 Internal Meeting vol.1 ライブレポート

tomohiro

猫を堕ろす

ついにこの日のイベントも最後のバンドになってしまいました。名古屋発、現在は東京に拠点を移し、シニカルポップの名の下シンセサイザーで夜な夜な人々を踊らせる猫を堕ろすです。彼らは大体イベントが良い日であるほど、酒気を強く帯びてステージに現れるのですが、この日の彼ら(主に伊藤)はかなりいい状態に感じました。つまりかなり酒気を帯びていたということです。

ライブを始めるのかと思いきや、まずはこの曲を聞いてくれ、みんなで踊ろうと新譜から”Internal Greeting”を流すところから始まります。「みんな踊ろう」とはよく言われる言葉ですが、実際壇上の人間は演奏してるし、踊るってどうやって、、と思うお客さんも多かったりするのではないかと思います。その点、この日はご安心。演奏前から既に自分たちの作った曲をただ流して踊っている彼らを見たあの日のお客さん方は、それを見てそれぞれの踊り方を見つけられたのではないでしょうか。ちなみにこの曲はタイトルの通り、今回のイベントに呼応するようにして作ってくれた曲で、これがあの会場で聴けたのはかなり嬉しかったですね。

 

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猫を堕ろすのライブはいつも熱狂の中にあるように思います。そこには、当然楽曲のキャッチーさもあるものの、その最大の要因は、「自分たちが誰よりも音楽を楽しんでいる」ことにあると感じています。脇目も振らず踊っている人を見ると、なんだか自分も人目を気にせず楽しんでいいんだなと思えたりしませんか?彼らはいつも、誰よりも自分の作った音楽で踊っているので、自然と周りもそこに付いていくようにして盛り上がっていくわけです。

最初の演奏は既にキラーチューンとなって久しい”Sound Recruiting”。5つのバンドとDJが休みなく繋げてくれた高揚は既に破裂寸前で、ライブよりもレイブと言った方が近いような一体感と多幸感が満ちていたように思います。続く”自転車”でギアチェンジを決めた後新譜から”五反田モーショントラック”。リリース後アルバムの中でも多くの支持を得たこの曲はベースもシンセベースに持ち替えての演奏。コミカルな歌詞と、ミドルテンポにどこかレトロな懐かしさを感じるフレージングは既にみんなの耳に馴染んでいるようで、口ずさんでいたお客さんも見かけました。続いたのは”あなたにとって”。チルな演奏にルーザーな歌詞は、エレクトロポップとパワーポップから強く影響を受ける猫を堕ろすなりのバラード。彼らの音楽の根っこにあるセンチメンタルさがよく現れていて、ライブでのセンシティブなシンセサイザーもよく耳に残ります。

 

ここで一度空気を入れ替えるようにして、今回の会場であるtime TokyoでMVの撮影も行った”シナプス”で後半が始まります。パワーポップ色の強いこの曲は爆発力のあるサビに自然と体が動かされます。勢いもそのままに”The Cats Are Alright”でなおさら会場はヒートアップ。もはや誰に乞われるまでもなくとも盛り上がるしかない空気がそこにはあって、そんな中でみんなそれぞれの気持ちの踊りを踊っていたのではないだろうかと思います。僕もここまでくるといよいよビールの飲みすぎであまり鮮明な記憶ではないのだけど、後から見返した写真で確実にそこにあった熱気を感じ取ることができました。音楽によって確かに人の気持ちは影響され、それは時としてこんなにも楽しそうな表情を生み出すのだなと、改めてここまで空気を持ち上げてくれた猫を堕ろすのパワーを感じました。

 

最後に演奏してくれたのは”Lover come back to me”。もはや私物化と言われようと構わず、この曲は聴きたい、と言っておいたおかげか最後に演奏してくれた、僕にとってのアンセム。ちょうど前作『サウンド・リクルーティング』がリリースされた頃、僕が感じていた日々の拘泥の言語化がまさにこの曲であって、他人事ではない何かを感じ取っていました。そういう人は実は結構いるのではないだろうか。そんな人が一人でもあの空間でこの曲に出会えた気持ちの高揚を味わってくれたのなら、お願いした価値もあったというものです。

 

そんなわけで大盛況の渦のうちに演奏は終わったわけですが、当然これで終われるはずもなく、アンコールが始まり彼らは再び登壇。最後の最後はみんなで楽しみたくてDJブースから周くんも引っ張り出し、半分オープンマイクでのアンコールとなったのが”Sound Recruiting”。その場にいる人たちが、「自分の曲だ」と言わんばかりにマイクに歌声を投げかけていく。そういう共感の表し方ができる音楽ってやっぱり限られていると思うし、この景色にたどり着けることがわかっているから、ついつい猫を堕ろすはトリにしてしまう。彼らの音楽に向けたエネルギーは否応なく周りを踊らせるわけで。演奏していた当人は酔ってあまり覚えていないとのことでしたが、申し分なく、最高の演奏だったと誰もが言うでしょう。

 

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僕は東京にとってビジターで、そこで楽しいことをやるなんて半ば無謀に感じていたところもあったのですが、終わってみればなんてことはなく、そこには純粋な楽しさを作り上げることができたように思います。コミューンを作る第一歩になれたのかなと。

今後も東京に限らず場所を広げ、この楽しさを伝えていけるように精進していきたいと思います。もちろん、また東京でもやりたいです。その時はまた遊びに来てください。

まずは第一回Internal Meeting、ご来場いただいた皆さん、一緒に作り上げてくれた皆さん、本当にありがとうございました。今後とも、cllctv.とその仲間をよろしくお願いします。

 

セットリスト


  1. Sound Recruiting
  2. 自転車
  3. 五反田モーショントラック
  4. あなたにとって
  5. シナプス
  6. The Cats Are Alright
  7. Lover come back to me
  8. (en) Sound Recruiting

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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