disc reviewcllctv. 企画 Internal Meeting vol.1 ライブレポート
PRIMACASATA
三番手は東京発5人組のポストハードコア、PRIMACASATA。彼らの約束されたメロディに対する会場の期待は高く、演者も勢ぞろいして最前列の熱気は十分でのスタート。そもそもこの日1日がずっとそういう日ではあったのだけど。”85″の冒頭、語りかけるようなアルペジオにすでに感情が揺さぶられ始め、前のめりにうなづくようにして揺れる観客に、まっすぐな歌声が届く。
彼らとは、最初の出会いであった三重県鈴鹿のライブハウスANSWERでのイベント以来、さまざまな縁で関わりを続けてくることができていて、それを本当に嬉しく思います。cllctv.のイベントで名古屋に来てくれたこともあるし、bookshelf distroを始める時、最初のラインナップとして声をかけたこともありました。ひとえに彼らの音楽はもっと伝わるべきものである、という思いが強く、いつもみんな聴いてくれ!という思いで届けていました。それは今回も同じだし、それでいてさらに今回は、Internal Meetingという今までよりもずっとcllctv.と演者の距離が近いコンセプトのイベントを開催するにあたってそれに賛同してくれたということに、共同体に加わってくれたことに、大変胸が熱い思いでした。
僕の周りにもプリマの音楽が好きな人は多いし、そういう人たちや、演奏中に気づけば最前まで出てきて拳を突き上げている、今日初めてプリマを聞いたであろう友人までたくさんの人の思いが彼らの音楽と向き合っているのを感じ、より心強い思いがしたライブでした。
続くのは前作より、”盲目”。「繋がる感覚を目を開けて探していた」、歌い出しからやまぬ合唱の声、過去への惜別に思いを馳せ、サビ前の溜め込んだ8拍に思いを噛み締めワーッと沸点に達する。彼らのライブは、毎度開始直後から既に会場の熱を底上げするような熱いものがあるが、この日は僕が見てきたライブの中でも一番の熱気が渦巻いていたように思う。彼らが一気に突き上げてくれた熱量が、このイベントを最後まで歓喜の渦の中に引き込んでくれたことは間違いない。
続く”scavensing”は未音源化の楽曲で、ソリッドな高速カッティングに耳を奪われる。目まぐるしく景色を変えていく様は初期の彼らの多段階さを思い起こさせる。そんな中にも一つ一つのメロディやフレーズに込められた細心のエネルギーは歌がなくともその熱量を下げることなく、聴き手も笑顔のままにそのめまぐるしさに食らいついていく。そしてボーカルが入ればパブロフの犬のようにワーッと盛り上がり拳を突き上げる。
残るは2曲となり、”Pricilla”、”海の向こうで”と続きます。今日の彼ら一の厚みのある轟音が響く”Pricilla”はシューゲイズなエモーショナルを加味した今までの彼らにはなかった方向性で、最近のheaven in her armsのマッシブな音像を思い起こさせる演奏。曲としてのスケール感は確実に広げながらも、持ち味のエモーショナルさは薄れることなく、この日一番のカタルシスだったと語られた、切り裂くような高速のトレモロに感情も持っていかれる上昇気流に当てられて会場の熱気もさらに上がり、最後はエバーグリーンささえ感じるメロディが冴え渡る”海の向こうで”。ググーッと持ち上げられて上空で解放された観客は思い思いの風景を脳裏に描きながら、残る一曲に思いを込めていく。そんな噛みしめるような思いも感じながら、来たるべき終わりに向け一斉に声を上げる。これってとても美しい景色だし、これを毎回生み出してくれるPRIMACASATAという音楽は、これからもずっと続いていってほしいなと思ったライブでした。
セットリスト
- 85
- 盲目
- scavensing
- Priscilla
- 海の向こうで