disc reviewcllctv. 企画 Internal Meeting vol.1 ライブレポート

tomohiro

corner of kanto

 

 

 

2018年に彼らと出会ってから、インタビュー、名古屋でのライブ、そして今回の東京でのライブと、回数を重ね、彼らの音楽を伝える場を設けてきた。少々ご大層な口ぶりではあるものの、伝えることがある種使命に思えるほど、出会ってしまった彼らの音楽は深く、研ぎ澄まされているのです。そして、cllctv.の名の下に会場に集まってくれたお客さんにとって、一番実りある出会いであろうと毎度確信するのが、そんな彼らのライブです。

 

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朝焼けの暖色に一筋の繊細さを取り入れるようなアルペジオから始まるのは”昼の庭”。彼らの作る音楽はいずれも非常に描写的な色を持つが、その中でもこの曲の描く風景は比較的のどか。とはいえ、彼ららしい不穏さは要所に潜み、そこに飛びつくようにして歓声が上がる。既に5バンド目を迎え、会場もかなり温まっているわけです。もちろん僕も。corner of kantoの明滅的な音楽に没入するには、集団的な酩酊がふさわしく、そういった大きな波の中で見た時、彼らの演奏はより熱量を帯びます。まさにそういった場を演出するための出演順がうまく働いた感覚があり、この時点でこの30分に満足を感じていました。

 

続くのは、未音源化曲でありながら、ライブでの熱い支持を受ける”稲穂の海”。彼らにしてはテンポの早いビートにハッとさせられると同時になだれ込んでくるアルペジオに、一気に脳裏に黄金色の乱反射が浮かぶ、そんな曲で、じわりじわりと熱を帯びていくようなサビのメロディワークに会場の高揚感も高まります。前回のcllctv.企画を名古屋でやった時、事前知識ゼロの観客がこの曲のイントロでみんな悲鳴のような歓声を上げていたことを思い出します。生命力を感じる曲です。

 

“私たちの伴奏曲”をライブで聞いたのは久しぶりかもしれません。前述の名古屋編で、「やらないの?」とうっかり言ったのを覚えていてくれたのか、はたまた。長回しに肺の酸素を吐き切るようなアルペジオが何度も周回していくままに、緩やかな稜線を描いていくこの曲は、比較的純ポストロック的で耳に馴染む人も多い曲かもしれません。僕が彼らに出会った際に印象的だった曲です。

 

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続くのは”浅川”。プログレさながらの異常なまでの緊張感で進行していくこの曲には熱狂的なファンも多く(主に身内)、この日のライブでも耐えきれなくなった聞き手の悲鳴にも似た歓声を何度も聞きました。

それがいいことか悪いことかは別として、彼らはとてもバンドマンに好かれるバンドで、それは一つのジャンルを原点的に掘り下げ追求しそこから音を出している、そんな真摯さとビジョンの明確さに多くの音楽家が惹かれるからなのだと思います。でもこの日においては、そんな同業者たちから生まれた熱狂が確実に、それ以外の多くの人に伝播していたように思います。そういう空気を作り出せるかが、僕のイベントの成功を占う指標の一つです。つまり、大成功だったと言えるわけです。

 

そんな陶酔的な空気を作り出した彼らの最後の曲は”団地”。ソリッドなドラムの3拍子が聞こえてきたら合図。たゆたうようなベースのアルペジオに、四つ角の輪郭を強調するようなフレージングが耳につくアルペジオが、構造的でありながら、そこに生命感の息づく「団地」を描き出します。彼らの音楽は、非常に示唆に富んだ歌詞を噛み締めながら聞くとなおのこと入り込め、なおのこと脳がこじれます。そんなサイケデリックな楽しみを提供してくれる数少ない興行としての彼らの音楽、これからも多くの人に伝えていけたらと勝手ながら感じます。

 

セットリスト


  1. 昼の庭
  2. 稲穂の海
  3. 私たちの伴奏曲
  4. 浅川
  5. 団地

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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