disc reviewonline interview cllctv. meets グッドバイモカ
今は自分の生活を書くことにしてる。フワフワしてるわけなんだけど、そのドリーミー具合がなんかグッドバイモカの今のバランスなのかなって
ツジ:グッドバイモカの結成のきっかけは奇しくも「文章」だったわけだけど。曲の歌詞はどっちが書いているんだろう。
髙井:今回のアルバムの曲はすべて作詞作曲池田さんがやってる。
池田:元々は交互に一曲ずつ書いてたけどね。
ツジ:そうなんだ。聞いといてあれだけど昔からほとんど池田が歌詞書いてると思ってた。
池田:「地球、最後の夜」は髙井。これは強く主張していきたい。
髙井:初めて書いたのがアレ。
池田:人生で?やば。
ツジ:普通にいい曲だったよね。当時DAYTRIVEで聞いて結構印象深かった記憶あるし。
池田:まあでもそういうコンセプト的な感じでいこうよ、みたいなのは無意識で共通してたのかな。実はこれ、さっきのシティポップの下りと繋がってくるとこがあってさ。例えば6、70年代のフォークって自分の生活を詩にしてたと思うんだけど、そこにはっぴぃえんどが持ち込んだのが『風街』っていう架空の街で、彼らはシティポップとか渋谷系に影響を与えたわけだけど。
「ここではないどこか」って場所を書くっていう意味では初期のグッドバイモカがやってたことで、それはある意味日本のシティポップの本流ではあるんだよね。当時はそんな考えてなかったけど。
ツジ:なるほど。そういう「ここではないどこか」を描くっていう思想は池田の歌詞の書き方にも息づいているのかな。
池田:そうだね。それは「不在感」とも言えると思うんだけど、自分は陽か陰でわけるなら陰だし、当時はその温度感が心地よかったんじゃないかな。
ツジ:池田が歌詞を書くにあたって影響を受けたりとか、指標にしていたりするものってあるんだろうか。「不在感」はその一つだと思うんだけど。
池田:今は東京で、一人で生活を立ち上げていくということをしているから、書くことも自分のことが多かったりするのね。だから、サニーデイサービスの「東京」ってアルバムがあるんだけど、あれはノスタルジックで失われてしまっている「風街」をいわゆる渋谷系から溢れ落ちた生活者としての「東京」に再び置き換えて書いてると思っていて。そのリアルさにはめちゃくちゃ気づかされるものがあった。だから今は自分のリアルな生活を書くことにしてる。当然社会人ではないので生活はフワフワしてるわけなんだけど、そのドリーミー具合がなんかグッドバイモカの今のバランスなのかなって思う。
ツジ:池田にとっては紛れもない「リアル」なんだけど、そのリアルが一般的なものではないから、という。実在しているのに何か別のもののような感覚というか。
サニーデイ・サービスの影響は大きいと思っていたけど、ソングライティング以上に歌詞に影響が大きかったのは知らなかったな。
池田:まあ俺はそんな感じ。サニーデイに関しては今回のアルバムで密接に影響受けてるから今後も出てくると思う。
髙井:東京にきてから、自分も町に暮らしてる側の人だと実感するようになったし、わたしも、今はそういう音楽がいいなぁと思う。どっちかっていうと池田の紛れもないダメなリアルに私の生活も近いから、何か別のものとは思ってないけど。
池田:不健全な魂を保つのには健全な肉体がいるって村上春樹が言ってて、もう26だし、ちゃんとします。
ツジ:ちょっと前の文筆家みたいな暮らしぶりではあるよね 笑
ものを書く、という話から少し派生して、池田が名古屋にいた頃から主宰している「詩合」という詩を詠むイベントがあるけど。これもものを書く一つの大きな活動ではあるよね。
池田:詩合はね、めちゃめちゃ広がった、視野が。即興詩だから、どうしても適当に思いついた架空の物事とか、オチを作ろうとしていらない言葉が無理に挟まったりする詩が多いし、俺もそうなりがちなんだけど、たまにその人間そのものみたいな、魂とか思想そのものを載せた詩が出てきたりしてね。
自分も含め、お前は一体何者なんだって問いをし続ける感じ。ツジも一度出てくれたけど。
ツジ:本当に即興で書くから、自分の根底にある世界観とか、それを修飾してきた経験や芸術とか、とにかく生身の自分にひっついているものだけで勝負する感じが刺激あった。世界を文章を通じて伝える、という意味においてかなり純粋で面白みのある試みだと思う。
結構音楽関係のメンバーが多かったイメージだけど、あれはどういうきっかけで始めた活動?
池田:あれはその場の俺の思いつきを周りがイベントにしてくれただけで、面子はヤスくん(午後の犬 ex.女装差別)が大半集めてくれてる。ヤスくんも前言った名古屋学生EXPOからの縁だね。でも演劇、短歌、油絵、小説家とか、音楽関係の人は全体でみるとそんなに多くない気がするけどね。
ツジ:池田の周りは音楽に限らない芸術家がたくさんいるよね。これは普遍的な「バンドマン」像とは違っていて面白いなと思う。バンドもまたカルチャーのはずなんだけど、あんまり他のカルチャーと交わりが少ない人種に思うんだよね。そういう広い芸術への造詣がグッドバイモカの音楽にも影響を与えているような。
池田:まだ自分のことあんまりわかんないんだよね。だから曲作ったり、詩集だしたり、小説の公募だしたりとかしてる。もちろん色んな人から影響とか刺激は沢山受けてるし、関わってくれる人も増えているからこれから作っていくもので2020年の自分が見えてくるんじゃないかな
ツジ:詩集ね 笑
飲み代の代わりにもらったもんね、買うつもりだったけどさ。
池田:飲み代を詩集でチョロまかしたみたいじゃん。昭和の最悪な小説家。
ツジ:なんか文筆家ぽくて良くない?俺は結構感銘を受けたよ 笑
2020年、奇しくも世の中ごと大きな転換期となって、自分や自分のやってること考え直す機会を得た人も多いと思うんだよな。そんな中でそれぞれが作用しあって良いものを生み出していけたらいいなというのは、一番思うことだね。
池田:そうだね、みんな色々作ってると思うしね。