disc reviewmail interview cllctv. meets Aysula
轟く音の壁、口数少なく語られる言葉から湧き出す先鋭。それはまるで濁流のように聞き手の感情を飲み込み、震わせる。名古屋発、シューゲイザー・オルタナティブAysulaが実に七年ぶりとなる音源、”THEORIA”をリリースした。
今回はVo/Gt.ヤマダ氏を招き、Aysulaとは何か?その真髄に迫るべくインタビューを行った。
今やるべきバンドはシューゲイザーを背景にしたオルタナティブだ
ツジ:今回はよろしくお願いします。Aysulaはいちリスナーとしてライブハウスで初めて見たときから衝撃を受け続けているバンドで、こうしてお話を聞けることをうれしく思います。早速ですが、バンド結成から現在までの経緯を伺ってもいいですか?
ヤマダ:よろしくお願いします。2010年に当時やっていた前身のバンドが解消して、1年間程はイベンターのグループに参画しつつメンバーを探していました。当時はダブステップやポストロックが主流で、イベントではmoshimossや[que.]、食品まつりが所属する1980円など著名な方々をオファーしたりしていました。
就職を期に、上京してきたのでサークル的なツテもなく、音楽に通じている友人を作るにはイベントをやることが1番てっとり早いと考えていましたが、結局メンバーはそれぞれmixiやoursounds、myspaceなどの出会い系サイトに手を出しました(笑)。
ただ、この頃のアーティストの方々との活動が、後々の活動へも大きく影響していると考えていて、まだシューゲイザーリバイバルの走りであった”JAPAN SHOEGAZER FESTIVAL”で初めてLemon’s Chairイマニシさんにお会いしたのもこの頃だったかと思います。
これらの経験を踏まえて「今やるべきバンドは、シューゲイザーを背景にしたオルタナティブだ」と考えていました。
ジャンル構想が立ったあとは何度かメンバー候補に声を掛け、スタジオに入ったりしていく上で現在の体制で結成するまでは早かったですね。
ツジ:「今やるべきバンドはシューゲイザーを背景にしたオルタナティブだ」という部分に関して伺いたいのですが、音楽としてのシューゲイザーへの思い入れというよりも、方法論としてのシューゲイザーに魅力を感じたということなのでしょうか?
Aysulaの音楽は、正統にシューゲイザーを志向していない(根っからのシューゲイザー好きとは違ったエネルギーを持ったシューゲイザーをやっている)と感じることがあり、もしかしたらそういった感覚はヤマダさんのシューゲイザーとの向き合い方から生まれているのではないかと思ったのですが。
ヤマダ:その通りです。実はマイブラもスロウダイヴも割と後に知ったので、「皆が聴いているのはこれか」という感じで聴きましたが、元々好きだったspeakergain teardropやeksperimentojなんかもシューゲイザーに含まれる事を知らずに聴いていた節がありましたね。
当時出ていたバンドもシューゲイザーリバイバルを感じる新しい要素は多くて、そういう意味で「オルタナティブ」の背景がありましたが、本来はパンク〜ロキノン〜テクノという、変な変遷でした。シガーロスやビョーク・LFOは昔から好きでしたが、レディオヘッドやモグワイは当時全く刺さらなかったりして。いわゆるUKロックやエモ、ハードコアを全く聴いてこなかったので、音楽の趣味趣向は非常に浅く隔たっていたと感じます。シューゲイザーは、オルタナやグランジとは別にゴシックロックやヴィジュアルからのジャンルの側面もありますね。
ただ、メンバー間のジャンル感覚においては、本当にカオスで趣味趣向も大きく違いますし、「AysulaはJ-POP」という括りで共通して収まっているとも考えますね(笑)。
ツジ:Aysulaを聴いて、声高に「これはJPOPだ!」と叫ぶ人はいないように思いますが(笑)。でも、本来的な意味で言えば、JPOPって多くの音楽ジャンルの影響の下、多層構造的に積みあがってきた結果の音楽だと思うので、成り立ちという面でとらえれば、AysulaをJPOPと呼ぶのもある意味正しいのかもしれませんね。
ヤマダ:メンバー各々が聴いてきた変遷が結構バラバラなので、総称してしまっている部分もあると思いますが概ね正しいと思います(笑)。
ツジ:バンド名の由来など何かあれば教えてください。
ヤマダ:「頭文字がAだと見つけやすい」という単純な前提もありましたが、当時読んでいた田口ランディの「キュア」に出てくるオカルト要素の架空人物として「アイスーラ」という名前があり、言葉の響きがとても良かったのが決定打だったとかと。綴りはAYSURAだったのですが、頭を大文字にするとバランスが悪かったので変更しています。
ツジ:Aysulaという名前って、読みやすいし頭に残るし、すごく印象深い言葉だなと思っていたのですが、引用だったのですね。オカルト要素の架空人物、という設定にもAysulaの音楽の根本に触れるものを感じますね。