disc reviewmail interview cllctv. meets Aysula

tomohiro

簡単に紐解かれてしまう優しすぎる音楽性って自堕落に近い


 

ツジ:Aysulaをやる上で影響を受けた音楽、好きな音楽など、音楽的な背景のお話を教えてください。

ヤマダ:とにかく歌うことが好きな少年で、歌モノとして曲を聴くのは今でも好きです。ギターを本格的に始めるきっかけだったのはACIDMANやGREEN DAYでした。当時の名称でいうポストロックにのめり込むにつれ正統派と言われる類のロックからインディーに傾倒し始めましたね。
18歳位からはビョークやworld’s end girlfriendsとかAphex Twinをよく聴いてましたかね。
その頃あたりから手癖で弾いていたテンションコード、バレエコードなどから脱却を含め、ある程度曲を作る過程において自分のなかで制限を設けるようにしてます。
例えば、「つまらなくなるギリギリまで歌を削り・引っ込める」「オーソドックスな曲展開(サビ要素)を設けない」「歌詞にはギミックを仕掛ける」などこれまで自分の中でオーソドックスに「善」と捉える要素に対して、真逆に位置する要素を取り入れてしまおうと考え始めました。
1stアルバムのクレジットを作る時に思ったのが、「歌詞カードと違う事を歌っていると面白いな」ということで、独自の当て字やカモフラージュを作っています。

ツジ:一般的には、「自分のやりたいことを詰め込む」というのが何か作品を作るうえでの原動力となるように思うのですが、あえて制限を設けてこられたことには何か理由はありますか?オーソドックスな「善」に対して真逆の行いを続けるのはエネルギーが必要だと思うのですが。

ヤマダ:簡単な答えですが、周りから少しでも逸脱するための手段だったと考えます。
バンド結成って人によっては初めは暑苦しいくらいだったり、逆にサークル活動に慣れた人だと結成や活動に小慣れてしまいますが、僕は大体のバンドにおいて「コア」として動く場合にはその両面を持つほうが効率が良いなと思いました。
沢山結成して解散した中で、性格の不一致や熱意の差とかありましたが、ちょうど良い温度感は結成当時から必要だと考えていました。

これまでの楽曲制作において産みの苦しみというより、アルバム制作の度に気が滅入ることや嫌気が指すことは多かったと思います。
一晩明けてOKテイクのトラックに対して「これで楽曲として成り立つのか?」とか「本当につまらなくなってない?」とかメンバーにデータを送る際にも葛藤は少なからずあったと思います。
制作過程において「〜何々っぽい」や、「あのバンドの音楽性に近い」とか、簡単に紐解かれてしまう優しすぎる音楽性って自堕落に近いと思うんですよね。

だから、普段はヴォーカル曲は殆ど聴かないことも多いです。逆に歌モノとして聴く場合は自身で口ずさめる位に反芻することが多く、シーンや情景に本当に寄り添って聴くのであれば、ここぞというシーンの曲を厳選してこっそり泣きながらメンタルのバランス取ってます(笑)。
それくらいに歌というものは、僕の人生に寄り添っている「祈り」の象徴だと感じているので…。
逆をやろうと考えると多少のジレンマは保ちつつ、単なる独白や、下らないと揶揄してきたメッセージ性にもきっと意味はあると感じています。

ここ5、6年程は自身がバンドをやっているからかバンドは全く聴かなくなり、トレンドがわからなくなってますが、ダンスミュージックは継続して好きで、普段はIDMやHIPHOP要素のアンチコンのBathsや、IDMのLusineなどシンプルに良いキックが鳴ってる音楽が好きですね。
最近はアフリカのDigital Sangomaが癒しです。

 

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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