disc reviewinterview cllctv. meets 猫を堕ろす

tomohiro

シンセサイザーを軸に音楽を作っていくのはすごい武器になるんじゃないか


 

Tomohiro:音楽をしていくっていう部分で続けて質問になるんだけど。
さっきも少し出たように、プレイヤーとしての薫人は、ベースやギターでもバンドを組んで曲を作っていたわけだよね。で、それが今はバンドでシンセを弾いてる。それは曲作りの仕方にも大きく影響があるはずだと思うんだけど。
薫人はYMOがすごく好きなのを知っているから、そこにルーツを持つ薫人の音楽のスタイルとして、今のキーボーディストという形に行き着いたのかなと思うんだけど。

伊藤:うーん。”ウィンターウェイティング”を作った頃とかは全然自分でシンセ弾くつもりで作ってなくて。なので曲調もギターロックぽさが強いというか。
それでなっちゃんが入って、いざライブ、となったらこいつ全然シンセ弾けないし練習して来ないし。

 

ナツ:(笑)

Shijun:で、この時期ライブに自分のシンセ持ち込めるようになったのもあったよね。

伊藤:そう、そんなタイミングでたまたま先輩からNord Leadを譲ってもらったのもあって、あんまり乗り気ではなかったんだけどあるなら弾いてもいいかなと。

Tomohiro:それが結果うまくハマって今に至ってるね。

 

20190602-13

Shijun:確かにそこからシンセ軸になって音楽の雰囲気は変わったね。

Tomohiro:シンセとかキーボードってあくまでもストリングスとかコードの厚み出したりとか、あるいはギターとハモらせたりで裏方っぽい役回りが多いイメージというか。
猫みたいに、リード=主役の楽器として生っぽく演奏するバンドって結構珍しいように思うな。
ジャズバンドとかだと、やっぱピアノが主役級に使われることが多いから、鍵盤がメイン張ることに違和感を覚えないんだけど、ロックバンドでシンセメインっていうアプローチって、日本ではあんまり見ないよね。

伊藤:そこはさっき言った独自性の部分にかかってくるのかもしれないけど。そのものの音をそれっぽくきちんと出してあげたいというか。あー、これはすごく伝えにくいな。
ロックバンドで思考停止的に使える鍵盤って、「オルガン」なんだよね。いい意味でも悪い意味でも思考停止して使ってもOKな鍵盤楽器。それって、バンド全体での倍音構成が大きく関わっていると思っていて。

Tomohiro:つまり他の楽器との兼ね合い?

伊藤:ギターっていうメインの音が鳴ってて、そこに重ねる倍音として抜けすぎないのはどういう音なのか、っていう考えがあるように感じて、その答えとして当たり障りないのがオルガンなのかなと。

Tomohiro:あくまでも鍵盤が補助的な役割として機能させられているとそうなる、という話だよね。

伊藤:そう。そういう意味で、ちゃんとシンセを弾いていくぞという気持ちがあったから「オルガンの音」を避けたい面があって。さっき上げた”ウィンターウェイティング”はもともとオルガンでフレーズ入れてたんだけど、シンセを弾く立場になって色々試行錯誤したね。
ソフトシンセとかも試したんだけど、どうしても鍵盤の機械的な部分が強調されて、コミカルになってしまって微妙に合わなかったんだよね。
それでYAMAHAのCS(YAMAHA reface CS:アナログモデリングシンセ)を入れてみた時に、それがすごく楽器として生で鳴っているように感じて。
Tomohiro:ソフトシンセの時も鍵盤は弾いてたと思うんだけど、それでもやっぱり実機で弾くのとは違う?

伊藤:全然違うね。CSもモデリングな訳だから音自体はソフトシンセと同じようにデジタルデータ由来のはずなんだけど、録ってる時にADDAコンバータ通して録ってるからなのかもしれないけど、全然空気感が違うね。

Tomohiro:それって、ギターのレコーディングとかでも感じることだね。
やっぱり実機で踏んだ歪みが電気信号としてDAWに送られてくるのと、入力した生音の電気信号がDAW上で歪みに置き換わるのとでは全然違う。味付けされた音が入力されるか、入力されてから味付けされるかの違いというか。そしてその味付けの仕方がデジタル上の仮想回路か、ハンダづけされた物理的な回路か。

伊藤:ギターに置き換えるならそういう話だね。シンセでも基盤を通ってプロセスされた音がDAWに入るってことなので一緒だと思う。それが空気感を作っている。ソフトシンセ単体だと、物理的な回路を通った歪みとか劣化がないから逆に他の生の楽器と並べると浮いちゃう。

 

20190602-4

WRITER

tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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