disc reviewinterview cllctv. meets 猫を堕ろす
デジタルのコミカルさと、アナログの生っぽさの両立は間違いなく、アウトプットの目標としてあった
Tomohiro:そして、猫の今回のアルバムにおいては、「生音志向」と「DTM的電子音楽」の両方の要素を持たせようとしていることが重要な気がしているんだけど。
伊藤:あるわ。それは結構……
実際に今挙げたような二つの要素の中間地点みたいな話、デジタル然としたデジタルのコミカルさと、アナログ(にデジタルを鳴らす)の生感の両立は間違いなく、アウトプットの目標としてあったと思う。
面白い話があって。今回のアルバムの6曲くらいは、YAMAHAのREV7(ラックサイズのデジタルリバーブの名機。発売は30年前ながら今尚多くのレコーディング現場で愛される。)を勢いで買ったままに使っていて。リバーブに関しては、一部もともとリバーブかけてるトラックもあるんだけど、それらをまとめてDAWからREV7を通して、聴きながら書き出す、リアルタイムバウンス的な作業をしているのね。書き出しするのに1曲分まるまる聴かなきゃいけないから、普段しないけど。
で、これがなぜかシミュレータのリバーブとは全然違う空気感が出る。すごく音源にまとまりが出るのね。
Tomohiro:そこはやっぱり、実機を通しているって言うのがあるのかな。
伊藤:そう、まったくそれ。理屈はさっぱりわからないんだけど、解像度とかの問題なのかな?がっつりかけても全然わざとらしい仕上がりにならないんだよね。
で、なんでこんなことをするのかっていうと、やっぱりDAW上で完全デジタルに完結したくなくて。音源はやっぱりバンド感が欲しかったから、アナログシンセ使ったり実機のリバーブ使ったりして、「生である」という理由づけをしようとしたんだと思う。
Tomohiro:それで言うと、最近も薫人はRolandのSH101(Rolandのモノフォニックシンセサイザー:単音しかならないシンセサイザー の名機でDorian Conceptも愛用する)を買ってたよね。もちろん生っぽさを目指してはいるんだろうけど、「こういう音にしたい」というよりかは「この機材を使って音楽を作りたい」が強いように感じるな。
伊藤:生っぽいの結論として、フィジカルなんすよ、俺は。そうなるとやはりプレイヤー的な視点も入ってくるから、自分が好きなプレイヤーと同じものを使ったり、気に入っている部分を取り入れていくっていうのは結構やる。もちろんシンセとしてもすごくいいものだし。そこで実機にこだわるのも、やっぱりmidiで鳴ってる同期と手で弾いてる同じフレーズは全然空気感が違うというのがあるから。
Tomohiro:そこは猫というか薫人のコンポーザー、プレイヤー両視点からの強いこだわりに思うね。”Sound Recruiting” のあのシンセリフ、ずっと繰り返しだけどライブでは手で弾いてるよね。
伊藤:そう、まさにそういう部分。ちなみに音源でも手で弾いてるよ(笑)
Tomohiro:えっ!そうだったのか。
ナツ:まぁあのフレーズは最初同期でやろうとしたけど、ライブでドラムが合わせるのが難しすぎて挫折したんだけどね。
伊藤:そういう理由もあったけど(笑)。あれを生で弾くの結構むずいんだけど、生で弾くことによるドラムとのグルーヴ感とかは、すごく大事だと思う。
Tomohiro:Passion Pitもあれだけ作り込んでてもライブは生演奏でやるしね。
伊藤:それがめっちゃかっこいい。