disc reviewinterview cllctv. meets corner of kanto 『耀く池』リリースに寄せて

tomohiro

―『鉄道』までは、俺の中に描きたいイメージがあって、それをみんなでスタジオで合わせながら永遠に追求していく感じというか。このやり方自体はエネルギーを使ってる分完成度も高くてよかったんだけど、『鉄道』ができたことでこの作り方に対するエゴイズムが満たされた感覚もあって。


 

成塚: 自分もちょっと矢部さんとはかぶるんだけど、やっぱり、ライブできなくなってだいぶ音楽に対するやる気をなくして。そのギリギリピークだったのが2022年かな、ソロアルバムを出したんだけど、それが思ったほど反応なくて。そこから2年くらいはまぁいいやとなってた時期があって。ただそこから、去年とかかな。個人的にゲームのBGM作る仕事をもらったり、カントーも企画とか再開し始めて、それでまた気持ちも上がってきて、今に至るというか。

ツジ: カントーってバンドって、メンバーそれぞれが自分の音楽活動もあって、それぞれの深め方をしているバンドだよね。バンドじゃない軸の音楽を持ってるというか。

成塚: みんなやろうと思えば自分で作れちゃう人だからね。そうやって4人引き出しが多い人間が集まらないと、カントーみたいな、意味わからない音楽ってできないんじゃないかなって思う 笑

ツジ: あ、それまさに2つ目の質問だ。

Q2. 『耀く池』は前作と比較しても、よりアンサンブルも立体的となり、音楽としての複雑さが増したように思います。何か制作の進め方などに変化はありましたか?

成塚: 具体的に変わったのは割と直近かも知れない。『詩を書く青年』『踏切』『耀く池』あたりの。

漢人: そう、ここら辺がすごい最近の曲で、アルバムとしても一番最後に出来たやつだね。

矢部: この三曲と以前の曲の作り方が結構違うんです。『鉄道』までは、俺の中に描きたいイメージがあって、それをみんなでスタジオで合わせながら永遠に追求していく感じというか。みんなをすごい使いつぶしながら。このやり方自体はエネルギーを使ってる分完成度も高くてよかったんだけど、『鉄道』ができたことでこの作り方に対するエゴイズムが満たされた感覚もあって。

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ツジ: 『鉄道』以前の感じだと、1~2年に1曲くらい出来て、ライブのセットリストもじわじわ変わっていく感じだったよね。

成塚: そう、ただこのやり方は時間かかりすぎるし、気づいたら前のアルバムからもう5年とか、6年とか経ってるっていう焦りも生まれてきていて。

ツジ: 自分が『耀く池』を聴いた感想としては『鉄道』以前の曲は構築美的で複雑で、全員の意見の集合体に思えたけど、その内情としては「矢部帝国」のジャッジのもとだったと。

矢部: そう、言ってしまえばバンドメンバーからアイデアを盗んでいるというか。ただ成塚の言った通り、この作り方の限界と個人的な到達点も見えたから、それ以降はバンド運営を主眼に置いて、イニチアシブを分けていった感じ。その結果、『詩を書く青年』などの3曲は、割と1年ぐらいでできたのかな。当然アンサンブルも変わるし、アルバムとしても二つの作曲方法があるからバラエティ豊かに聞こえるかなって。

漢人: 特に、作り方で言うと1曲目と7曲目が、最初ギターと歌だけのデモだったのかな。それに対して”変”なドラムを付けて、有無を言わさずすぐにレコーディングしたんだよね。感性のままやった結果ですごく自分の色が出てると思う。矢部の8分のアルペジオ聴いて、3連符のドラムフレーズ入れて。

成塚: その結果、良くも悪くも漢人の暴走で面白いものになった。

小紫: うん。漢人があれだけ破壊してくれたから、結果縫える隙間が多くて自分はやりやすかったね。

矢部: デモは8ビートで、曲のリファレンスはスピッツの『スカーレット』だったんだよね。きれいな歌ものっぽい感じで。その感じで初回スタジオに入ったんだけど、次のスタジオではそれが3連符になってて、「これでレコーディングするから」って漢人からは言われ。

漢人: いつもだったらここからもう一回”矢部様”の意見が入り、もう1年練らなきゃってなるんだけど、今回はそれをしてない。

ツジ: それって一つ理想というかさ。バンドが成熟してる結果出来てるやり方だよね。みんなで合わせたタイミングで、さすがに120点ではないけど完成されてて。じゃあこれを120点にするために1年かけるんですか、っていうのはあると思うから。

矢部: 1stの時はまだ音源も出てないし、まず最初ちゃんとしたものをやらなきゃいけない、っていうのもあって意見も通させてもらってたんだけど。2ndはもっと自由にやれるねというのもあって。

成塚: 1stでアホみたいに録り直して基礎体力ついたから、2ndではフレーズを磨くために練習したりとかをすっ飛ばせたというのも大きいね。

小紫: あと、自分のギターを宅録できるようになったのも自分の中では大きいかも。1stは矢部か成塚どっちかの家で録ってたから、時間的な制約とか…。

矢部: まだ若かったから、それこそ「もうすぐお母さんが帰ってくるから夕飯が」とか、家族が寝なきゃいけないとか。

一同: 笑

小紫: でも、おかげで無限にやり直しができるようになったからそれもそれでしんどくて…。

矢部: 『詩を書く青年』が、漢人が思いついたフレーズを思いついてすぐ録った、というのがあって。正直そのドラムが下手だったんだけどそれで行くっていうから。

成塚: そう、漢人のそのドラムに一生懸命ベースとギターが合わせて。

小紫: いざ僕の番になったら、もう何にリズム合わせていいのかわからん感じになっちゃってて。本当ひどかった 笑。

漢人: 録り直すってなったけどさすがに申し訳なかったから、ドラムだけ録り直して他の楽器は残す感じにしようと思ったんだけど、いざドラム抜いて聞いてみたら「他の楽器がヨレすぎてて無理です」ってなっちゃったね。

矢部: そういうひどいよもやま話があります。

ツジ: そういうときってさ、DAWでクオンタイズとかして調整しちゃわないの?

成塚: やろうと思えばできるけど、それは許さない。

小紫: 録り直すより楽だと思うんだけどなぁ。

成塚: クオンタイズしちゃうと演奏のノリがっていうのもあるんだけど、「君らは録ったら終わりだけど、クオンタイズは俺だからね」っていう。クオンタイズよりはレコーディングの方が楽しいしさ。

矢部: クオンタイズって何?

成塚: 録った音源を16分とかの音符に合わせてDAWでリズム整えるみたいな作業だよ。

ツジ: (スパルタすぎてクオンタイズ知らないままここまで来てるんだ)

成塚: 漢人のグルーヴがね、クオンタイズするとなくなっちゃうから。

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tomohiro

エモを中心に枝葉を伸ばして聴いています。アナログな人間でありたいと思っています。野菜がたくさんのったラーメンが好きです。

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